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私はミツルの攻撃を全て交わし、逆にミツルをこてんぱんに叩きのめしてやった。
地に伏したミツルの首を前脚で押さえ込み、睨みつけるとミツルは怯えがくがくと震えた。
「―――コウガはわたしのものです!二度と手を出すことは許さない!」
毛を逆立て、牙を剥き出しにして言い放つと、ミツルは押さえ込まれた頭を必死に縦に動かした。
「リクト…」
後ろから小さな声が聞こえて振り返ると、コウガが血を流してうずくまりふるふると震えていた。慌てて駆け寄ると、ミツルがこそこそと逃げ出す。
「コウガ、コウガッ…!」
ペロペロと舐めるが一向に血が止まらない。くそっ、あいつ、どれだけ深く噛みついたんだ!
「コウガ、大丈夫ですよ。すぐに助けます…!」
私はぐたりとするコウガの体の下に潜り込み、背中に背負うとコウガを落とさぬように急いで駆け出した。
「にゃあー、にゃああう!ニャオオー」
「なんだ、うるさいなあ…って、リクト!?お前いつの間に外に…なんだそいつ?」
私はコウガを連れ自宅に戻り、もっとも信頼できる人物であるご主人様を必死に呼んだ。もう大学からは戻っているはずと思っていたらやはりご主人様は家にいてくれたようで私の声を聞き駆けつけてくれた。
「ご主人様!お願いです、コウガを助けてください!」
ニャウ、ニャウと必死に呼びかけ、下におろしたコウガの周りをくるくると回る。
「帰ってきて姿が見えないから布団にでも潜ってるのかと思ってたら…。これはお前の友達か?結構ひどい怪我してんな、助けてほしいんだな?」
コウガのそばにしゃがみ込み、手を伸ばすご主人様にコウガがびくりと体を竦ませ毛を逆立てた。私はコウガにすり寄り、ペロペロとなめてやる。
「大丈夫、大丈夫ですよ、コウガ。この人は私のご主人様です。以前話したことがあるでしょう?優しい方ですので怖がらなくていいんですよ。あなたをきっと助けてくれます」
「ご、しゅじんさま…?」
私の言葉に安心したのか、コウガがニャウ…と甘えた声を出した。それを聞いてご主人様は優しく微笑み、コウガの頭をそっと撫でて抱き上げるとキャリーバッグに入らせた。
「わかってるよ、リクト。ちゃんとお前も連れてってやるからそんな顔すんな」
立ち上がったご主人様を見た私に、ご主人様が笑って首輪にリードをつけて私を抱きあげる。
さすがご主人様です。
「フギャー!」
病院について診察してもらい、怪我を手当してもらった。怪我自体はそんなに心配する事も無かったらしい。コウガは野良猫のため予防接種など一切していない。それを医者から聞いたご主人様が医者に注射を頼んだ。
初めての注射にコウガがこの世の終わりのような声を出す。
「あっ、こら!リクト!」
私はご主人様の腕から慌ててするりと抜け出し、注射が終わったコウガの横にぴたりとひっついた。
「…お前、よっぽどそいつが好きなんだなあ」
それを見たご主人様と医者が呆れたようにけらけらと笑った。
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