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2

家に帰ると、ご主人様はまだ戻っていなかった。ほっとしてクッションに腰を下ろし、泥の付いた手足をペロペロと舐める。
丁寧に、丁寧に、外の痕跡を無くすように毛繕いをして体を丸めクッションに伏せる。

『また遊ぼうねぇ〜』

今日初めて会ったばかりの不作法な野良猫を思い出す。

また、会えるだろうか。とくとくといつもより少し興奮気味の心臓の音を聞きながらゆったりと眠りについた。


それから三日ほど。
いつものようにぼんやりとしながらクッションに丸まっていると、ベランダの窓をカリカリと掻く音がした。
ご主人様の部屋は小さなマンションの一階だ。たまに友人の猫が挨拶にくることがある。友人かと思い顔を挙げてリクトは驚きのあまり全身の毛が逆立った。

「にゃははー!リクト、爆発したぁ〜」
「こここ、コウガっ!?」

コウガは驚き固まるリクトを無視し、窓枠に爪をかけカリカリと開けようとする。

「リクトぉ、開かにゃいよぉ。」
「あ、ご主人様が鍵をかけているので…」
「そっかぁ、残念〜。じゃあいいや。」

ちぇっ、と拗ねたように顔をくるくると洗い、窓際に腰を下ろす。

「コウガ…どうしてここに?たまたまですか?」

「ん〜?違うよ、リクトを探したんだよ〜。だって、あれからリクト全然姿みせにゃいんだもん。また遊びたいなぁ〜って。ね?リクトは?遊びたくなかった?」

ぱたぱたと尻尾を上下に揺らし、コウガがこてんと首を傾げる。
また、私と遊びたかったって?何が遊びだ、ちょっと追いかけてやっただけじゃないか。あの後、毛並みを整えるのに大変だったんだ。

「…私は、別に。」

コウガの言葉にどこか高揚する心をわざと否定しながら顔を背ける。

「リクト、いつも何して遊んでるの?ご主人様って優しいの?」

私の態度を意にも介さずコウガは好奇心丸出しに私を次々と質問責めにする。
渋々答えを返しながら、窓際に居座り続けるコウガと日が暮れるまで話し続けた。

それからというもの、コウガは気ままにふらりと私の家に立ち寄っては日が暮れるまで会話をしていくようになった。
そんなコウガに、よくもまあ飽きないものだとうんざりしながらいつしかコウガを心待ちにするようになった。

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