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6

その後、唐津はアメリカに渡りとある研究所に入ったと聞いた。

野々宮の道のために譲ってくれた唐津の思いを裏切ることはできない。
唐津は、自分の研究を全て野々宮の名前で登録していた。野々宮は受け取った研究データを企業に売却、その金で孤児院を救うことができた。そして、アメリカからその研究の成果に対して野々宮への渡米要請。

野々宮は迷うことなく野々宮家を捨てた。


アメリカに来ても、思うのは唐津のこと。
この空の下、同じ国に唐津がいる。

会いたい。抱きしめたい。

薬師寺と唐津、二人の間に入る隙間はないと知ってはいても野々宮は唐津への想いを振り切れることはできなかった。


コツコツとアスファルトを鳴らしながら夜道を歩く。

「自分がこんなに未練たらしい、女々しい男だなんて思わなかったな」

自虐的に笑いながらアパートへ向かっていた。

アパートの入り口へ差し掛かろうとしたときに、ふと脇の路地で人の気配を感じた。この辺りはまだ治安のいい方だが、こんな夜中なにが起こるかわからない。このままアパートに入っても大丈夫だろうか。後を付けられたりしないだろうか。

「ひっく…」

だが、予想に反して路地の暗がりからは泣き声が聞こえてきた。声の様子からすると大分幼い。
…子供か?

野々宮はゆっくりと泣き声のする方へ向かった。

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