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5

野々宮は崎田と言う一年生が薬師寺に思いを寄せているのを知って、話を持ちかけた。

唐津に精神的ダメージを与えろ。

崎田は自分の思う通りの働きをしてくれた。


だが、ここで予定外の事が起こる。


一緒にいるうちに、野々宮の心境に変化が現れたのだ。
唐津は、平然と周りに興味なく生きているように見えてそうではない。傷つきやすく、優しい。でもそれを微塵も見せることがない。

強がりだな…

そんな唐津を、野々宮は本気で守ってやりたくなってしまったのだ。
ミイラ取りがミイラにとは、この事か。


野々宮は唐津への思いと孤児院への思いの間でひどく苦しんだ。
そして、薬師寺の会長立候補宣言。



一刻の猶予もならない。野々宮は焦りから、唐津を無理やり犯そうと試みた。


「お前はそんなことしないよ」


組み敷いた唐津の言葉に、とうとう抑えていた気持ちが溢れ出す。

野々宮には、唐津を傷つけることなどできなかった。



その後、堂々と演説をするも敗退。だが不思議と悔しさはなかった。
利己欲の為に会長になろうとするやつなどよりはるかにふさわしい。むしろすっきりと憑き物が落ちたようだった。


自分の夢は、諦めよう。今すぐに野々宮の会社に入り、孤児院を救うことに全力を尽くそう。
黙って持ち出すにはでかい金だが、今すぐ一つの会社をもらってうまくやれば孤児院を救うことぐらいはできるはずだ。

それを渋っていたのは、自分の夢のため。会社に一度でも関われば、二度と抜けることはできないだろう。


自分の夢と孤児院の家族。


天秤に掛けるものではない。



そんな野々宮に、唐津はあっさりと自分の研究を引き渡した。
全て薬師寺が知っていたと聞いた。それを聞いて唐津は自分の大切な物を迷うことなく野々宮に譲った。


野々宮は、受け取って泣くことしかできなかった。

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