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4

野々宮がその方面に進みたいと言った所で、実の両親が反対するのは目に見えている。
実家の力なんて借りたくない。野々宮はそんなとき、高校の裏特権の情報を手に入れた。
金持ちの通う学校だが、野々宮が本来したかった研究をできそうなあらゆる設備が整っている。会社を継ぐためだと言えば簡単に入学を許してもらえるだろう。

自分の容姿や能力は嫌と言うほど把握している。野々宮は目的の為に入学し、人の目を盗んで研究を始め裏特権のために持ち前の巧みな話術で生徒会長へと就任した。

野々宮がある医薬品の研究を始めてしばらくしてから、とある情報が耳に入った。それは、同じ学園にいる一人の生徒が野々宮と同じ医薬品の研究をしているというものだった。

研究の分野においては早い者勝ちである。その生徒か、野々宮か。
野々宮は純粋に面白いと思った。勝負してやる。だが、二年生に上がった時に勝負を楽しむ余裕のない出来事が起こった。


孤児の家が、なくなるというのだ。


孤児の家を出た1人の若者が仕事に失敗し、母に借金の保証人を頼んだのだ。心優しい母は息子のため、迷うことなく判子を押した。ところが、その若者は実は立て直しができないところにまで追い込まれており、その金を持って雲隠れしてしまった。


孤児の家は、借金の抵当に入っていた。


何とかしなければ。野々宮の家は確かに金持ちだが、自分の両親が貧しいものたちに無償で金を出すはずなどない。
かといって息子の自分が持ち出せる額ではない。だが、今している研究はあと一歩で完成する。これが完成すれば、まとまった金が手にはいる。野々宮は必死だった。そんな折、野々宮を愕然とさせる情報が入ってきた。件の生徒が、野々宮より先に研究を完成させたというのだ。そして時同じくして入学してきた薬師寺太陽という男。
全てにおいて秀でたその男は、次期の生徒会長にと教師から打診されていると耳に入った。


野々宮は焦った。
このままでは、全てを失ってしまう。
自分は、なんの為にこの学園に入り偽物の仮面まで被って生徒会長に就任したのか。


何とかしなければ。


野々宮は必死になって薬師寺とその生徒について調べ上げた。
そして、薬師寺が件の生徒、唐津アキラを追って入学してきたと言う事実を知った。


唐津を落とせば、薬師寺にダメージを与え尚且つ研究を横どりできる。


――――野々宮が悪魔に魂を売り渡した瞬間だった。

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