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ちび、熱を出す

それは突然の事だった。

「鉄二、どしたんだ?ジュースいらないのか?」
とある土曜日、いつものように泊まりがけで遊びに来た鉄二が、風呂あがりにジュースを受け取って飲まずにじっと手に取ったまま動かない。
なんだ?いつもならおいしそうにすぐにごくごくと飲み出すのに。

「ジュース、ちらい。おみじゅ。」

あら、珍しい。そっか、今日は水の気分か。俺はコップに水を入れてすぐに持ってきてやった。

ところが、だ。

「ほら、水だぞ鉄二。ジュース渡せ」

水の入ったコップを差し出して鉄二の持つジュースを取り上げた瞬間、鉄二が泣いて怒り出した。

「や―――!てちゅの、てちゅのジュース!わあああん!」


な、何だってんだ!ジュースいらないんじゃないのか?


「悪かったよ、やっぱりこっちか?」


ジュースを渡して、いらないといった水を一口飲んだらまたまた怒り出した。

「てちゅのおみじゅ、飲んだあー!いぶ、てちゅの飲んだああ!わあぁん!」
「ええっ!?何だよ、ジュースがいいっつったじゃん!」

意味わかんねえ!でも泣いてるし、言うとおりにしてやらないと!

「悪かったよ、はい」
「や――――!!」

水を渡そうとした俺の手を、鉄二が思い切り叩いた。



がしゃん!



咄嗟のことで避けきれず、俺の手から落ちたコップが割れる。
うわっ、アブねえ!


しかも、それだけじゃなかった。
なんと鉄二は、自分が持っていたジュースのコップまでわざと下に投げ落としたのだ。
ばっかやろう!いくらかわいいちびっ子でもさすがにそれはだめだろ!

「鉄二っ!なにすんだ、謝れ!」

怒って大きな声を出した俺に、びくりと体をすくませた。

「やあー!てちゅ、悪いない!」

泣きながら、じたばたと暴れ泣きわめく。謝らない鉄二に段々といらいらが募る。

「鉄二!」

暴れる腕をつかんだ俺の手を、なんと鉄二は怒って引っ掻いた。
なにしやがんだ、このガキ!

「ちらい!いぶ、ちらいー!わあああん!」

泣きながら叫ばれた言葉にショックを受けた。
嫌い?俺が、嫌いだって…?



今まで、どれだけかわいがってやったと思ってんだ。それが何だよ。たかだか水を一口飲んだだけで、嫌いだと?
そんなに俺に自分のを飲まれるのが嫌だったのかよ!



沸々と、怒りがこみ上げる。鉄二相手にこんなに苛立ったのは初めてじゃないだろうか。
すく、と立ち上がって冷ややかな目で泣きわめく鉄二を見下ろす。

「ああそうかよ。お前に嫌われようが何しようが構わねえよ。俺もお前なんか大っ嫌いだ!」

俺の言葉に、鉄二は、ひっと息をのんだ。そしてまたじわじわとその目に涙を浮かべる。

「う、わあああん!わああああ!」
「なに、どしたの!?」

俺たちの次に風呂に入っていた春乃が、上がってきて異変に気づき慌ててリビングにやってきた。そして、泣きわめく鉄二を抱き上げる。

「どうもこうもねえよ!このガキ、さっきからわがままばっかり言って…」
「あれ?ちび、なんか熱いね。もしかして熱あんじゃない?」

鉄二を抱いた春乃が、鉄二のおでこに手を当てた。
怒りにまかせて春乃に愚痴を言おうとしていた俺は、ぴたりと言葉を止めた。


…熱?

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