3
春乃と鉄二の口があと少しで触れ合う、とその瞬間。俺は向かいのソファから慌てて立ち上がり鉄二の元へ駆け寄った。
そして、両手で鉄二の顔を掴み無理やりこちらへ顔を向けて、
ぶちゅ――――――っ!
鉄二の口に思い切りちゅうしてやった。
「ふや、ん!」
そのまま軽く舌を入れたところで鉄二が変な声を出した。その声にハッと我に返り、慌ててがばっと鉄二から離れる。
お、俺は一体なにを…!?
真っ赤になって口を押えて呆然と佇む。彼女がわなわなと震え出し、突然すっくと立ち上がったかと思うと無言で出口の方へ向かった。
「あ、あれ、どこ行くの?」
声を掛けるとくるりと俺の方を振り向き、
「このショタコン!!」
そう叫んで、ばん!と扉を思い切り閉めて出て行った。
「ショタコン…」
彼女の捨て台詞にショックを受けて佇む俺を見て春乃が腹を抱えて涙を流して爆笑した。
「いぶとちゅうちた〜」
きゃっきゃと喜ぶ鉄二にようやく我に返り、鉄二を抱き上げる。
「お前、ほんとばかだね。」
涙を流して笑う春乃をじろりと睨む。まあいいや。
「鉄二、もっかいしよか。」
「あい」
今度は、口をとがらせてチュッと軽く。さっきのはきっと焦って間違っちゃっただけだな、うん。まさか鉄二に俺がディープキスしようとしたなんてそんなことありえない。
彼女とのキスは、べたべたの香料の味がした。鉄二とのキスは、なんだか甘いミルク味。
俺、しばらくはキスする相手は鉄二でいいや。
end
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