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2

割れたコップと零したジュースを片付けている間に、春乃がぐずる鉄二を抱いて寝室へと連れて行った。

片付けを急いですませ、春乃の後を追うとちょうど体温計を取り出すところだった。

「38度。結構高いね。」
「…風呂の時、全然普通だったのに…」

さっき一緒に入ったとき、全然そんな素振りはなかった。楽しそうにしてたのに。

「子供はいきなり熱だしたりするもんだからね。兄様の話だとちびのご両親は明日まで出張だって言ってたし、医者は往診頼んでうちで預かっとくのはいいとして、夜中急変しないようにそばに誰かいてやらないと…」
「俺がやる」

間髪入れずに答えた俺に、春乃がちょっと目を大きくしてからにこりと笑った。

「じゃあ頼んだよ。汗はこまめに拭いてやって、何回か起きるかもしれないから起きたら水を飲ませてやんなよ。脱水起こしちゃこわいからね」

こくりと頷くと、春乃が部屋を出て行った。
タオルと、洗面器に水張って…。
あ、水も用意しないと。

鉄二を起こさないように素早く用意し、ベッドサイドの棚におき、側のイスに腰掛ける。春乃が呼んだのだろう、すぐに医者がやってきた。診察したのち、ただの風邪でしょう、と高熱が出た時ように頓服と風邪薬を置いて帰って行った。

「ん〜…、んん…、ふ、あぁん…。マァマ、ママァ〜…、ああ〜ん…」

苦しいのだろうか、目を閉じたままぐずぐずと泣いて空を掻く。
その手をそっと掴み、額の汗を拭いてやると、また静かにすぅ、と眠りだした。
何度か繰り返した時、お盆に夜食を乗せた春乃がやってきた。

「どう?ちょっとは落ち着いた?」
「ん…、今やっとかな」
「お前、なんも食べてないでしょ?ちょっとでもいいから食べな。」

サイドチェストの上に、春乃が持ってきた夜食を置いた。俺は無言で首を振る。

「一颯」
「…俺さ、なんも気付かなくて…。まさか熱があるなんてちっともわかんなかった。それどころか、かんしゃく起こす鉄二に本気で腹が立っちまった。嫌いだって言われて、俺も大嫌いなんて言って。
かわいいのに、かわいがってるはずなのに。まじでムカついちまった。
…鉄二、しんどかったんだろうなあ…」

眠る鉄二の頭をそっとなでると、じわりと涙が浮かんでくる。

こんなに小さい、かわいい子なのに、なんであんなひどいことが言えたんだろう。なんで優しくしてやれなかったんだろう。

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