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2

「綾小路くんっ!明日、デート楽しみだねっ!どこに連れて行ってくれるの?」
俺の腕に引っ付いて上目遣いで顔を覗き込んでくる、俺の彼氏。いつもならかわいいなって思うその仕草も何だか目に入らない。

「ねえ、綾小路くんってばあ。」
「えっ?あ、ああ、悪い。デートな、お楽しみだよ。」

ぐいと引かれてはっとして慌てて返事をする。
いけない、集中しないと。
そう思って笑いかけるんだけど、頭の中はすぐ違うことで一杯だ。

鉄二、なに踊るんだろうなあ。弁当美味いだろうなあ。

「もうっ!綾小路くんっ!ちっとも僕の話聞いてないでしょ!」
「えっ?ご、ごめん」
「僕のことだけ考えててくれない綾小路くんなんてもうしらないっ!」

ぷりぷり怒って帰ってしまった。ああ、まずったなあ。明日、デート奮発してご機嫌なおしてもらわなくちゃ。
あいつ、すげえわがままですぐ怒るんだよな。

「だから言ったじゃん。あいつはやめとけって」

部屋で頭を抱える俺に、春乃がばかじゃないのと辛辣な言葉を投げつけてくる。
学校が同じだから、俺が恋人を作るとすぐにバレてやれ『あの子はよくない』だの『質が悪い』だのけちをつけてくる。恐ろしいのは、大概春乃の審美眼が外れなしってとこだ。
今の彼氏も、告白をOKしたことを春乃に言ったら散々文句を言われた。

「人の恋人悪く言うなよな」
「はっ、相手の都合お構いなしに自分の事だけ考えろとか言う奴なんて恋人の資格ないね」

一言返すと百倍になって返ってくる。ほんと性悪だよ、こいつ。

「…お前行くの?」
「もちろん。鉄二さ、ペンギンの踊りするんだって。かわいいだろうなあ。」

ぺ、ペンギンだと…!?

「ま、しょうがないよね。たった1ヶ月しか経ってないのに記念日だもんね。一颯の分までちびを応援してきてやるよ」

いちいち引っかかる言い方しやがって!ああ、でもそれもそうかも。これから長く付き合っていくつもりなら、1ヶ月ごとに記念日とかってどうなんだろう。
確かあいつ、一週間記念をしてくれなかったとかって初め拗ねたんだよな。最初のうちはそれだけ俺が好きなんだって思ってたけど…



その日、俺の夢にはペンギンの列に混じりよちよち歩く鉄二が現れた。

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