ちびが一等賞
自慢じゃないが俺はモテる。そりゃもう兄貴にひけをとらないくらい。
これでも今まで彼女や彼氏が切れたことはないし、告白だって1日何回も受ける。
でも俺は兄貴とは違って、付き合ってる間はその子だけをきちんと大事にするよ?
あんま長続きはしないんだけどね。
あ、ちなみに俺はバイ。今付き合ってるのも、男の子。告白されてOKして、付き合って明後日でちょうど1ヶ月。『記念日は毎回してね!』という恋人のためにデートプランを立てて、プレゼントを買って。後は当日を待つばかり…だったんだけど
「発表会?」
夜、兄貴から珍しく電話がかかってきた。内容は、鉄二のこと。
『ああ、ちびこぐの通う保育園で発表会があるらしい。義姉さんから連絡があって、当日に仕事が入ったから代わりに行ってくれないかと言うんだがどうせなら皆で行った方がちびこぐが喜ぶかと思ってな』
「あぁ〜、その日はぁ〜…」
ちら、と赤いハートマークで印のついたカレンダーを見る。ちょうど日曜日だから、待ち合わせは10時。
「ちなみに何時から?」
『11時が出番だったかな。昼休憩は皆で弁当を食べるそうだ。小暮が皆の分を作ると張り切ってるよ』
11時…。弁当…。しかも手作りだと!?
時間変更って言ったら怒るかな…
『なんだ、デートか?』
「あ、う、うん。そんな感じ…?」
我ながら情けない声が出た。
『ならしょうがないな。好きな子を大事にしてやれ。』
ぷつりと切れた電話をじっと見る。
好きな子…
そうだよな。普通なら、付き合ってる方を優先するのは当たり前。なのに俺は何を迷ってるんだか。
ぱん、と顔を両手で叩いて気持ちを切り替えた。
ごめんなハニー。
…ごめんな鉄二。
[ 57/122 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
top