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2

残り少ない一学期が過ぎ、あっという間に夏休みになった終業式の次の日。晴海と克也は紙袋を手にとある駅に立っていた。

屋上での双子のご自宅ご招待の話の後、今更ながらに双子の実家の場所を聞けばなんと克也と晴海の二人が住む駅の隣の駅にあることが判明。

夏休みの予定を聞けば、帰ってこいと言われた終業式の次の日からの二週間の帰省以外は両親が仕事で海外に行くために二人は学校の寮で過ごすらしい。

終業式の日に
『離れたくないよぅ、さみしいよう』
と目をうるうるさせながら抱きついてくる紫音に晴海はこのまま閉じこめてやろうかと思った。

夏休み、双子が実家に帰っている間は自分たちも実家に戻る。そして、寮に帰る時に一緒に寮に帰ることにした。

その初日、なぜ二人が梨音、紫音と共に二人の住む町の駅に降りているかは終業式の前日に双子が実家に電話をしたせいである。克也と晴海は二人を自宅前まで送ってやることにしたのだが、そのことを二人からの電話で知った父がこともあろうか

『その日にそのまま家に連れてこい』

と言い出したのだ。急な話ではあるが、どうしても折れない父に双子が申し訳なさげに克也と晴海に伺いを立ててきた。正直、そんなに早くご対面になるとは思っておらず心の準備が出来てはいない二人だったが、愛しい恋人の父の言うことに逆らえるはずもない。

二人は、双子を送るついでにそのままご両親にご対面することになったのだ。



「ごめんね、克也先輩。」
「いや、大丈夫だ。俺たちの親は放任主義だし気にするな。それより、このお菓子でよかったか?」
「うん!パパ、甘いもの大好きなの!」

家に帰省するよりも先に自分たちの家に来させることになってしまってよかったのか、と不安げに頭を下げる梨音の頭をなでて微笑めば途端に子犬のように甘えてくる梨音に克也は破顔する。
梨音のアドバイスを元に挨拶用の手土産も買った。

「さあ、いくか。」

双子の実家は駅から徒歩で15分。
四人はゆっくりと一歩を踏み出した。



「ここが梨音ちゃんと紫音ちゃんの育った町かー」

たった一駅。小学校高学年位になれば行動範囲が広がり、よく自転車でこのあたりもうろうろしたものだ。よく見れば記憶にあるものがちらほら見える。

「もしかしたら、どこかですれ違ったりしてたのかもしれないね」

にこりと笑って紫音に言えば、紫音もにこにこと笑顔を返した。

「すごいね、先輩。俺たちお隣同士に住んでたんだね。その時に会ってたら、お友達になれてたかなあ。あ、でも、俺みたいなのとはお友達になってくれなかったかもしれないよね…」
「紫音ちゃん」

小学校高学年のころには、もうすでに梨音を護るものとしての自分を確立していた。高校で初めて会ったときも、晴海には敵対されていたしそれなら小学校の時に会ったとしても嫌われていたかも知れない。
初めて会ったときの晴海を思い出して少ししゅんとした紫音の手を、晴海がそっと握る。

「…その時に会ったとしても、お友達にはなってないよ。だって、俺は紫音ちゃんの恋人なんだからさ。その時もきっと、恋人になってるよ」

耳元でささやけば、紫音の顔がみるみるうちに真っ赤になってつないだ手をぎゅっと握り返してきた。


ああ、かわいい。


そんな紫音にキスしたい衝動を必死に堪えながら手をつないだまま歩き出した。

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