×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




3

「…すごいな」


目の前に現れた、ツタの絡まるおとぎ話に出てきそうなメルヘンな白い門に克也と晴海はぽかんと口を開けて思わず固まった。
門の向こうに見える白い大きな家も、まるでヨーロッパの建物のようだ。

「ママ、童話が大好きなの!」
「だろうな」

二人と付き合うようになってから、どうすればこんなに幼く純粋な子に育つのだろうかと不思議に思っていたのだが、家を見てなるほど、と思う。こんなにメルヘンなかわいらしい家を建てるご両親だ。きっと双子の様に可愛らしくて愛らしい、のほほんとしたご両親に違いない。
ほわほわとした家族を想像して二人は頬を緩めた。

リンゴーン、とこれもまるで童話のようなインターホンの音が鳴り響く。

『はい?』
「おかあさん、ただいま!」
『あら、その声は紫音ね?お帰りなさい。今開けるわね。』

門に備え付けられたインターホンから鈴のような声が響くと同時に自動で目の前の門が開いていく。双子の後にならって門をくぐり、屋敷の玄関先にたどり着いたその時だった。


「紫音!梨音――――――!!」

ばたあん!と吹き飛ばされんばかりの勢いで開けられた扉の向こうから、とても大きなガラの悪い一人の男が飛び出してきたかと思うと双子を両手で抱きしめたのだ。
驚きのあまり目を見開く二人は、その後さらに驚きの事実を耳にする。


「パパ!」
「おとうさん!」


「「…お父さんんんんんん!?」」



白を基調とした家具の並ぶ中、対面する形でソファに腰掛ける克也と晴海はがちがちに固まっていた。あの後、すぐにリビングに通され今に至る。

目の前でじろりと二人を無言で睨みつける双子の父。

身長は、ゆうに180を超えている。先ほどちらりと見ただけだったが、恐らく紫音を超えて190はあるだろうか。ガタイも、紫音ににて細身ではあるがしっかりと筋肉がついている。目つきがかなり鋭く、これも下手をすると紫音よりも悪人ヅラだ。

二人が先ほどまで抱いていた両親の姿がガラガラと崩れる。



そりゃそうだよな。紫音ちゃんがあんだけごついんだもの。お父さん似だって言ってたもんね。…それにしても…


ちらり、と目の前に座る双子の父に視線をやる。


…何でこの人、ずっとチュッパ咥えてんのおお!?


そうなのである。双子の父はずっと口の中に丸い棒付きのあめ玉をくわえているのだ。初めは、タバコかと思ったのだがタバコにしては細いし煙がでていなかったので何だろうかと不思議に思っていたが棒を持って口から取り出されたそれに落ちそうなほど目んたまをひんむいた。


ちらりと横に座る克也を見ると、今まで見たことがないような馬鹿面をしている。きっと自分と同じでめちゃくちゃ気にはなっているが、どう反応してよいのかわからないのだろう。

「あ、改めて、初めまして。紫音ちゃ…、紫音くんの学校の先輩で、秋田晴海と言います。今日はお招きありがとうございます。」
「あ、お、おれ、いや、僕は滝内克也です。よろしくお願いします。」
「…ああ。よろしく。」

慣れない挨拶を口にし、ぺこりと頭を下げるとじろりとまるで中身を見透かされるかのように見られ背中に冷や汗が伝う。まさに蛇ににらまれた蛙の気分であったそんな空気を遮ってくれたのは双子だった。

「えへへ、先輩。こちらが僕のパパの木村紫堂(きむらしどう)パパです!かっこいいでしょ?」

梨音にかっこいいと紹介され、眉間によっていたしわがゆるみ先ほどまで厳つかったその顔が破顔する。


なんじゃその顔……!


あまりの変化に内心突っ込む晴海と克也だが、必死にそれを隠し梨音に同意して頭を縦に振る。

「梨音〜、パパのお隣においで〜。」
「はぁい」

にこにこと笑いながら克也の隣に座る梨音を呼び寄せると、素直に従った梨音をぎゅうぎゅうと抱きしめて頬ずりする。

「梨音、会いたかったぞぉ〜!パパは寂しくて寂しくて毎日泣いてたんだからなぁ?梨音は?パパいなくて寂しくなかったか?」

ん?と甘くとろけた顔で首を傾げるでかい男に晴海と克也は必死に平静を装っていた。
全く持って、どういう反応をすれば正解なのかがわからない。ただただ焦り、体中にいやな汗をかいていた。

「あのね、はじめは寂しかったけどね。たくさんたくさんお友達もできたし、あの、その…、か、克也先輩が、ずっと一緒にいてくれたから、大丈夫だったよ。」
「…ほぉう。そうかぁ〜。よかったなぁ〜…。滝内くん、だっけな?ずっと梨音のそばに、ねえ?ありがとうなあ?」
「う…、いや、はい…」

にっこにこと笑顔だが決して笑ってはいないその目にしどろもどろに返事をする。


redの総長ともあろうものが、と思うがいかんせん恋人の父と言うとそれだけでこちらが悪いことをしている気分になる。

「紫音。おいで。」


梨音をひとしきり愛でた後、今度は晴海の隣に座る紫音に声をかけて手招きをした。ちらりと晴海を見て、父の紫堂を見て、を繰り返す紫音に晴海が行っておいで、と優しく声をかけると紫音はゆっくり立ち上がって紫堂の方へ向かった。

「さ、紫音。おいで。」

紫音が来ると紫堂はにこりと笑って自分の膝をポンポンと叩く。
紫音は父に言われ、真っ赤になりながらそっとその膝の上に座った。

[ 106/122 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top