笹七と春乃の場合
「はるの〜ん!お元気〜?」
「元気だけど。」
「いやんはるのん、相変わらず冷たい目線が俺らのハートに突き刺さるわ!」
げらげらと笑い転げる二人をさらに冷ややかな目で睨みつけると二人は僕の肩を勝手に組んでぎゅうぎゅう挟み込んできた。
痛いんだけど!
「なあ、はるのん。聞いてほしい事があんだけど。」
「そうそう、俺ら春のんにどうしても言いたいことがあるんだよね」
急に真剣な顔をして二人してじっと見つめてくるから、何があるのかと内心怪訝に思ってた。そして、一度はあ、と大きくため息をついて、七元が口を開く。
「はるのん。俺ら、はるのんのこと、ほんとは嫌いなんだよね。」
「そうそう。実は嫌いだったの。」
二人して『嫌い』と口にして、じっと僕を見つめる。それに対して、僕が思ったこと。
こいつら、ほんとくだらない。
「そう…。」
わざと小さな声でそう言って、悲しそうに目を伏せてやる。視界の端で二人が笑いをこらえているのが目に入った。
「な〜んて、びっくりした!?はるの…「僕は、笹岡と七元が大好きだよ。」
ネタばらしの言葉に被せて、にっこりと微笑んでそう言ってやると、二人とも口を開けたまま固まった。
「え、ちょ、はるのん?」
「え…ま、まじ…?」
二人して途端に真っ赤になってどもりはじめる。何、その反応。見たことないんだけど。
「うん。笹岡、七元。僕、二人が大好きだよ。好き、好き。ものすごく大好き。」
うるりと目を潤ませて二人を見上げてそう言ってやる。二人はますます真っ赤になって
口を手で押さえたりきょときょとと視線をさまよわせた。
ほんとなんなの。ちょっと気持ち悪いんだけど。
「はるのん!俺らも大好きだから!」
「は、春乃!大事にするよ!」
真っ赤になって抱きしめようとしてきた二人をするりと交わす。え、なんで?と不思議そうな顔をしている二人に僕はにっこりと微笑んでやった。
「お前らも僕の事が、『大好き』なんだよね?だったらくっつかないでくれる?」
そう言ってくるりと背を向けて歩き出すと。二人が今まで赤かった顔を今度は青に変えて走って追いかけてきた。ようやく意味が分かったらしい。ほんとばかだね。
「は、は、はるのん!ちがう!ちがうから!」
「そうそう、ごめんって!まじごめんなさい!春のん大好きだから許して!」
「うん、だから同じ気持ちだねって言ってんじゃん。」
すぱっと斬り捨てる様にそう言うと二人そろって泣き真似をしてぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。
ほんとにばかなやつら。同じ気持ちだって言ってんじゃん。
ま、せいぜいエイプリルフールの罠にかかってなさい。
…嘘でもちょっとショックだったんだからね、これくらいの仕返しはいいでしょ?
end
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