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小鹿ちゃんとハロウィン

俺たちの学園は、お祭り好きだ。生徒たちが楽しめるようにその季節のイベントや祭りは必ずパーティーをする。

その中でも人気の一つがこのハロウィン。

なぜかというと、いわゆる公開告白大会になるからだ。

生徒たちは皆お菓子を持ち、仮装をする。同じく仮装した生徒は、自分の想い人である人の元へ行き例の合い言葉を言うのだ。


『トリックオアトリート』


合い言葉を言われた生徒は、OKならお菓子を渡さない。

『好きにしていいよ』

の、告白を受け入れた合図なのだ。
逆に、お断りの場合はお菓子を渡す。仮装と言ういつもの自分とはまた違う自分になれるためハロウィンのこの日は至る所でその駆け引きが行われ、皆結構大胆にもなって校内はそれはそれは甘い雰囲気で充満するのだ。

だから。


「こ〜ぐれえええええ!!!」
「綾小路」

生徒会長であるこの俺、綾小路も朝から仮装してうっきうき。だってだって今日はだな、お祭りのため生徒会の仕事も休みなのだ!ちなみに仮装パーティーは午後からで、俺は小暮の仮装をお楽しみにしていたので朝から我慢して×10、パーティーが始まった今ようやくいとしの小暮の元へ訪れたのだ!

「うぎゃ――――――!!」

小暮はなんと、小鹿の仮装をしていた。といっても、着ぐるみなんかではない。シカの角と耳のついたカチューシャに、茶色のロングの手袋。そしてそして、茶色の超ミニのタンクトップ(ピタピタ)に、茶色の短パンしっぽ付き(超短けえ)、…茶色の、ニーハイだと…!?

「な、なんだその破廉恥な恰好は!やめなさい!へそと足を晒すのはやめなさい!」

慌てて羽織っていたマントを小暮に被せ、ぎゅうぎゅうと抱きしめる。ちきしょう!今日の小暮を見たやつ、皆目をつぶしてやろうか!

「う、上村君が、『きっと会長が喜ぶよ』って、くれたんだけど…おかしかったか?」

上村の仕業か!ちくしょう、グッジョブだけどあとで草壁に言いつけてやる!

「お、おかしくなんかない!ただ、かわいすぎて、他のやつがお前のその姿を見たのかと思うと…」
「あ、綾小路…ありがとう。」

抱きしめて耳元で囁くと、真っ赤になって俺の腕をきゅっと掴む。ああもうかわいすぎる。食ってもいいですか。

「綾小路も、すごくカッコいいよ。…きっと皆見惚れてただろうな」

頬を染めたままふふ、と笑う小暮。俺の格好はオーソドックスに吸血鬼だ。タキシードに長いマント。確かにそこいらの猫ちゃんたちが黄色い声を上げてたけどな。小暮の今の言葉に勝るものなんてない。いくら誰に何を言われようが、小暮の一言が一番俺の心を震わせる。

「ありがとう、小暮。さっそくだけど、合言葉いいか?」
「あ、う、うん…」

真っ赤になってもじもじとする小暮の顎を掬い、じっと見つめる。うん、ちょっと潤んでるその目にめっちゃ欲情してしまって、俺はついつい。


「トリック&トリック!」
「…う、ぁ、えぇ?」

俺の合言葉に小暮が妙な声を出す。それもそうだろうな。合言葉は『トリックオアトリート』。お菓子くれなきゃ悪戯するぞ、が正解。でもな、小暮。

「お菓子なんざいらねえ。いたずらオンリーだ。」

そう言ってにやりと笑い、真っ赤になって固まる小暮を抱いて寮の部屋に駆け込んだのは言うまでもない。


ああ、ハロウィン最高!!

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