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一日遅れのバレンタイン

※このお話は『強面バンビにご用心』の生徒会役員、副会長のお話です。


いつも頑張る副会長の意外な一面、ちょこっと覗いてみませんか?


イメージを崩したくない方は、お引き取りください。

―――――――――――

いらいらいらいら。
一人、誰もいない生徒会室で書類を進める。

会長のバカは昨日から小暮さんとずっといちゃいちゃしてるんだろう。
今日は二人とも学内での姿を見かけない。
上村は昨日草壁に引っ張られてるのを見た。きっと今もお仕置きと称した密事で、ベッドから解放されないんだろう。
草壁はあんな顔して鬼畜だから、上村は2、3日は休むかも。

仕事事態はそんなに急ぐものはないから、別に構わないんだけど。


「…みんな、ずるいです」

いいな。好きな人がすぐ近くにいて。
いいな、好きな人にすぐに会えて。


「…僕だって…」


バレンタインデーに、チョコレート渡したかった。バレンタインだけじゃない。イベントなんてほとんど会えない。


書類に、ぽたりと雫が一つ落ちた。
いけない。いつもは平気なのに、毎日会長たちのいちゃいちゃっぷりを目の当たりにしてるからかな。
今日は、やけにナーバスだ。


ぐい、と涙を拭くと、携帯がなった。



まさか、このタイミングで。
心臓が高鳴る。めったになることのない、あの人専用の着信音。



「…はい」

『イイコにしてたか?』


久しぶりの声に、胸が熱くなる。

「どうしたんですか?珍しいですね」

平常心、平常心。迷惑をかけちゃいけないから。邪魔にならないように。


『…つれないな。かわいい恋人の声が聞きたかった。それじゃだめか?』


じわり、じわり。心にしみる。
ああ、いつもなら。いつもは、我慢ができるのに。



「…声だけなんて…」

『ん?』

「会いたいです…義兄さま…」



会長が、羨ましくて。上村が羨ましくて。


でも、あなたはとても忙しい人だから。僕の義兄さま。山本グループの総裁だから。



「俺もだ」
「…!」


驚いて振り返ると、大きなバラの花束を抱えたあなたがいた。


「ど…して…」
「バレンタインには間に合わなかったな。すまない。今回こそはと頑張ったんだが…」


花束を差し出しながら、にこりと微笑む。


「…いつも寂しい思いをさせてすまない。今日は一日、お前のそばにいれるから。」


優しく耳元で囁かれる、その言葉は。
僕には、何よりも甘いチョコレート。


「うん…今日はずっとそばにいて…」


明日からはまたがんばるから。
一日遅れちゃったけど、今日が僕にとってのバレンタインデー。


一日遅れのバレンタイン・end

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