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バンビちゃんと夏祭り

「こ〜ぐれ〜!見ろ見ろ!景品ゲット〜!」

にこにこと笑いながらぬいぐるみを高く掲げ振り返ると、小暮が柔らかく微笑みながら小さく拍手をしてくれた。拍手ってなんだ!かわいいなおい!

俺と小暮は、今学園近くで催されている夏祭りに来ている。親父から『二人に』と浴衣が送られて来たときには浴衣が肌蹴た小暮を想像して親父に心でてを合わせたものだ。だが、やはりいきなり『浴衣プレイはいかがですか』だなんて言えるはずもなく、せっかくだから祭りを楽しもうと小暮を連れ出した。

これはこれで大正解だ。かき氷を食べた後にほんのり紅色になった唇に吸い付きそうになった。フランクフルトを咥えた時なんかあまりのエロさにガン見した。
他にも、リンゴ飴やら水あめやら、とにかく小暮の好む祭りの食べ物は舐める系が多い。

ありがとう小暮。

俺は食べ物よりも射的や輪投げなどゲームをもっぱら楽しんでいた。特に射的は大得意だ。

「ほら、あげる。」
「…!あ、ありがとう」

射的でゲットした小さな小鹿のぬいぐるみを渡すと、真っ赤になって微笑んでぬいぐるみをじっと見つめた後大事そうに胸に抱きしめた。

だからかわいすぎんだろうが!誰かに狙われたらどうすんだ!

「おっと」

段々とひとが多くなってきて、ふと俺たちの間を人が通り離れそうになった小暮の手を引いて近くに引き寄せる。あっぶねえ。こんな人ごみではぐれでもしたら探すのに一苦労だ。

「あ、綾小路…!」

そのまま手をつないで歩き出した俺に小暮が焦ったように声を掛ける。「ん?」と首を傾げながら振り向くと小暮は真っ赤になって困ったような顔をしてぷるぷると震え、おずおずと手を離そうとした。
それを、力を込めて離すまいと握りしめる。

「綾小路、手、手…」
「だめ。離さない。はぐれたらどうすんだ?」
「でも、でも…」

学園とは違い外の世界であるこの祭りで男同士手をつなぐと言うことがどれほどのリスクを伴うかわかっている。小暮はそれを心配して離すように言っているのだろう。泣きそうな顔できょろきょろと辺りをうかがう小暮の手を引き、社の裏へ連れて行く。
俺はそこで小暮を優しく腕に抱きしめた。

「いやだったか?外の世界で俺と手をつなぐの」
「!い、いやじゃない!でも、でも…」
「小暮」

俺の言葉に慌てて首を振る小暮の顎を捕え、そっと口づける。

「…俺はね、誰に見られようが指さされようが何しようが平気なの。好きな奴と堂々と手だって繋ぎたいしデートだってしたい。だからな、小暮。俺がすることで、お前が嫌なことじゃなければ拒まないで。拒否しないで。…愛してる人に触れる権利を奪わないでくれ…」

抱きしめて耳元でそう囁くと、小暮がひゅっと息を詰めたのがわかった。それから、ゆっくりと俺の背中に手を回し、ぐりぐりと肩口に顔を埋める。

「…ご、めん。ごめんなさい。やなことなんて、一つだってない。綾小路が俺にしてくれることは、俺にとって全て特別に大事なことだから…」
「…っ小暮…!」

じゃあ浴衣プレイをしよう!と声に出そうとして、俺たちのいる社に誰か近づいて来るのが分かった。くそう、誰だ!せっかくいい雰囲気だったのに!思わず小暮の手を引いて脇に隠れ、小暮を社に押し付けさあ続きを、と顔を近づけた時。



「やっ、ああぁああ!」



艶を含んだ、女にしては低い悲鳴が聞こえ何事かと小暮とそっと覗き込む。


「いやっ!や、ああぁ!」
「とりあえず、一回ね。終わったら、寮に帰って、朝までずっとイかせてあげる。」


そこには、会計の草壁にバックで責められ泣き叫んでいる上村がいた。


小暮と二人、その場から飛んで逃げ帰ったことは言うまでもない。


ま、それに触発されちゃったこともあって帰ってから上村以上に小暮を泣かせてやったけどね。その時に

「もぉ、ぐちゅぐちゅ、やらぁ」

なんて震えながらぐずぐず泣く小暮を余計に激しく苛めた俺に

「お、俺が嫌なことは拒否していいっていったくせに!」

と真っ赤な顔で涙目で言われた。

「拒否されても止めるとは言ってない。それに、エッチの時の小暮の『やだ』は『もっとして』だもんな?俺のすることは小暮にとって特別で大事なことなんだろ?」

とにやりと笑うと真っ赤になってぷるぷる震え、消え入りそうな声で
「ちがうもん…」なんて言うからまた小暮に襲い掛かった俺は『一週間えっち禁止』を言い渡されました。


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