×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




ホワイトデーの行方

※バレンタイン企画に出てきた『行方』の二人のお返しの日です。

―――――――――――

僕は、朝からずっと憂鬱だった。原因はホワイトデーの今日。

学校に行くと、クラスで一番美人の富山さんが
「聡くんにホワイトデーにお返しもらっちゃった!」
と皆に宣言してたからだ。聡はバレンタインの日、すごく沢山の女の子からチョコを渡されてたけど全部断ったって言ってた。実際、帰りに荷物がなかったんだけど…



…もしかして、富山さんのだけ、こっそり受け取ったのかな。



「なんて顔してんの。」


教室にいたくなくて、体育館裏でぼんやりしてたら砂森君が声をかけてきた。僕と聡は、彼のおかげで想いが通じあえたんだ。

「富山でしょ?よくあんな嘘つけるよね。ああ言って噂流せば聡を捕まえとけるとでも思ったのかな。」
「…うそ、なのかな。」

ぽつりと呟いた僕を、砂森君がよしよしと撫でた。

「品川はほんとに控え目だね。いい所だけど悪い癖だよ?
聡を一番知ってるのは誰?君が信じないで誰が信じるの。」

砂森君の言葉に、頭を打たれたような感覚が走る。


…そうだ。今まで、聡のそばにいたのは僕なんだ。聡がそんな嘘をつくような奴じゃないって、僕が一番知ってるはずなのに。

「ごめんね砂森君。ありがとう!」
「うん、いってらっしゃい。」

笑顔で送り出してくれた砂森君に背中を向け、僕は聡の元へと走っていった。
教室につくと、聡と富山さんがいた。

「あのさ、あんなこと流されると困るんだけど。」
「どうして?嘘じゃないじゃない。聡くん、お返しくれたもんね?」

お返し…
富山さんの口振りから、ほんとにもらったんだということがわかる。でも、だめ。聡を信じるんだ。

「確かに、お返しは渡したよ。でもそれはホワイトデーじゃない。俺が部活で怪我したとき、君が貸してくれたハンカチをよごしてしまったからそのお返しだって言ったよな?」
「私、ホワイトデーのお返しだなんて一言も言ってないわよ。ホワイトデーに、お返しをもらったって言っただけ。それを周りがどう取るかなんてわからないわよね?
ね、いっそのことほんとにしちゃわない?私、ずっと聡くんのこと…」

「悪いけど」


富山さんの言葉を遮り、聡が話し出す。


「俺、今まじ本気で好きでつき合ってる奴いるから。そいつを悲しませるような真似、やめてくれないかな。こんな時期にお返し渡した俺も悪かった。それは反省してる。でも、俺そいつ以外眼中ないから。」


そう言って、教室を出た。

「透」
「聡…」
「…あのさ…」

何か言いかけた聡の口を塞ぎ、首を振る。

「…大丈夫。信じてるから。」

にっこり笑うと、聡もほっとしたように笑った。


帰り道、聡は僕にキャンディの瓶詰めをくれた。

「物とかは、重いかと思って。中身がなくなってもいつでも俺が追加しにいってあげる」
「ありがとう」

お互いちょっと顔を赤くして、手をつないで帰った。


次の日、富山さんは噂について聞かれると
「勘違いしないで、ただ汚れたハンカチを返してもらっただけ」
と言っていた。

砂森君が僕を見てにっこり笑った。彼にはまた助けてもらっちゃった。

『砂森君、ありがとう』

口ぱくで彼に向かっていうと、ちょっと照れくさそうに笑ってた。


happy whiteday!

[ 14/70 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top