チョコレートの行方
※こちらはリクエストのべるの、人気の高かったお話『想いの行方』の二人です。
―――――――――――――今日はバレンタイン。女の子が、思いを込めて愛する人にチョコレートを贈る日。
お菓子会社の陰謀だとか言う人もいるけど、僕はすごく素敵な日だと思う。
紆余曲折を経て、大好きな聡と恋人になれた今。僕も、聡に『僕を選んでくれてありがとう』ってチョコを渡したい。
…って、頑張って作ったん、だけど…
「坂上くん、チョコもらってー!」
「私も!頑張って作ったの!」
「坂上くん、受け取ってください!」
朝から、聡の周りは常に女の子の山。休み時間も常に呼び出し。
…仕方ないよね。女の子の日だもん。
僕はそっと、机の中のチョコをカバンに直した。
その日の放課後。僕は聡に待っててと言われて部活の終わるのを教室で待ってた。
「ごめんな、透。遅くなって。さ、帰ろうぜ。」
着替えの終わった聡が教室にくる。
あれ?なにか、違和感…
「…聡、あの…今日荷物それだけ…?」
あんなに沢山チョコを貰ってたはずなのに、聡はいつものスポーツバッグしか持ってない。
「え?いつもどうりだけど、なんで?」
「…だって…、今日…」
もにょもにょと口ごもる僕の頭に、聡がぽんと手をおく。
「あは、バカだな。大事な恋人がいるのに、他の人からのを受け取る訳ないじゃん。全部断ってたの、見てなかったの?」
見てない。見れるはずなんてなかった、自分の恋人が他の人から告白される姿なんて。
「聡…」
全部、断ってくれたなんて。
僕は、嬉しくて嬉しくて、胸をぎゅっと握りしめた。
慌てて、カバンを漁る。
「あ、あのね、聡!僕、僕、これ昨日作ってて!聡に食べてもらいたくて、ありがとうって言いたくて、でも聡今日みんなに呼び出されてて、女の子いっぱいで、あの、あの…」
焦って上手く言葉が出ない。ああ、僕なにやってるんだろう!ちゃんと、ちゃんと聡に渡したいのに!
「透」
震えながらチョコを差し出す僕を、聡がぎゅっと抱きしめた。
「ごめん、不安にさせたんだな。大丈夫、俺は透だけだから。透だけが、何より大事な人だから。」
「聡…」
「チョコ、ありがとう。ほんとはさ、もしかしてもらえないかなーって思ってちょっと心配してたんだ。…すっげーうれしい。」
聡が、優しく笑うから。僕はもうたまらなくなって、泣いてしまった。
「聡…、ありがとう。僕を好きになってくれて、ありがとう。
これからも、どうか僕の恋人でいてください。」
「こちらこそ。好きになってくれてありがとう」
夕日の射し込む教室の中。そっとキスをした。
チョコレートの行方・end
happy valentine!
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