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9

どれくらいの時間が経ったのだろうか。
お互いくたくたになるまで抱き合った俺は、
起き上がれない幸人様を抱き上げてシャワー室に連れて行き、丁寧に体をきれいにした。
指先まで、まるでお姫様のように扱う。

幸人様は椅子に座りなされるがまま、嬉しそうにはにかんで俺を見ていた。
全てが終わり、きれいにしたベッドに幸人様を横たえる。

「…正明も…」
「ええ、いますよ。幸人様のおそばにいます。」
「…違う。一緒に、寝てくれ…」

きゅ、と俺の手を握りしめる。
俺は微笑んでそっと幸人様のベッドに上がりこみ、一緒になって横たわると幸人様を胸に抱きしめた。

「…お前はそれが好きだな…」
「…そうですね。
母の情事が弟の耳に入らないように弟といつもこうやって寝ていたもので、癖なんです。
…それにこれって、一番、ぬくもりが感じられるでしょう…?」

俺の言葉に幸人様が背中に回していた手でぎゅっと俺のシャツを掴んだ。

「…どうしました?」
「…ごめんなさい。
正明に、ずっと誰かとヤッてるとこ、見させて…。
い、嫌なこと、思い出させて…」

泣きそうな顔で俯いて震える。後悔してもしきれないのだろう。その罪悪感で潰れそうな幸人様は、その体躯よりもはるかに小さく見える。
そんな幸人様が愛おしくて、これ以上傷ついてほしくなくてそっとその頭を撫でる。

「…いいんです。
正直、一週間続いた時はうなされちまいましたけど、もう気にしてません。
…やきもち、妬かせたかったんですよね?」

幸人様が真っ赤になって俺の胸に顔を埋めた。

今なら、滝沢が
『俺のせいだ』
と謝ってきた意味が分かる。
おそらく幸人様は、書庫で倒れていた俺と滝沢の事を勘違いしたんだろう。
それで、俺を自分の方に何とか向けたくてあんな方法しか思いつかなかったに違いない。
滝沢に異常に冷たく当たっていたのも、俺を独占したかったがため。
そう考えると今迄の行為全てが俺への愛の告白のように思えて、そんな幸人様を改めてとても愛しく思った。

幸人様の顔を上げ、軽くキスを落とす。

「…気づかなくてすみませんでした」

にこりと微笑んだ俺にほっとしたような微笑みを見せ、胸に顔を埋める。
とん、とんと優しく背中をあやしていると、やがて胸のあたりからすうすうと柔らかな寝息が聞こえ始めた。


その音を聞きながら、俺も静かに目を閉じる。
久しぶりの人のぬくもりに、弟を思い出して少しだけ泣いた。


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