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「すみません、何があったのか、ですよね。
いやね、俺が孤児で家族愛を知らないって話をぽろっとしただけですよ。それでなんか思うところがあったんじゃないですかね?」
へらり、と笑う俺を黛がじっと見つめる。
肩に置いていた手に力を入れ、俺を自分の方に引き寄せた。
「…ハードな人生送ってきたんだね。
だいじょぶ。ここには皆いるからね。
俺だって、正明っちを助けたげるから。
何かあったら頼りなよ?」
偽りなき黛の言葉に、不覚にもちょっとじんとした。
くそう、昨日のことがあったからかな、俺今メンタル弱え。
「…あざっす」
なんとか一言だけ返すと、肩に置かれていた黛の手がいきなり外された。
「えっ、なに?あ…」
黛自身も驚いて俺と一緒に振り返る。
「ゆ、幸人様…」
黛の手を掴みながら、じろりと黛を睨む。
うわ、超不機嫌。
「俺の専属執事だ。なれなれしくするな」
そう言って黛の手をゆっくりと降ろす。
それから、今度は俺の方へと顔を向けた。
「…お前は俺の執事だろう。
お、俺のそばに、いなきゃだめなんだからな。」
不機嫌にそう言った幸人様の顔は、黛やその他の人に向けていた今迄の顔じゃなくて。
「…拗ねてる?」
思わず思ったことが口からぽろりと出てしまった。
途端に幸人様の顔が真っ赤に染まる。
「べ、べつに拗ねてなんかないっ!」
くるりと背中を向けて、階段へと向かう。
黛がさっきとは比べ物にならないほど落ちそうに目を見開いて俺と幸人様を何度も見比べきらきらとした目を向けてきた。
やめろちきしょう。
その目にムカついた俺は変えた花を黛の背中にさしてやった。
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