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5

その日の夕食、咲人様が隣に幸人様を呼ぶと今迄のように嫌そうな顔など少しもせず、ちょっと気まずそうに咲人様の隣に行く幸人様に高田、黛、滝沢の三人がぽかんと口を開け間抜けな顔をした。

「また話をしてくれるようになって嬉しいよ、幸人。
何かいい事でもあったのかい?」
「…別に」

にこにこと咲人様が話しかけると、幸人様はぶっきらぼうにそう返す。でも、その声色がいつものようにいらいらとした感じではなくて、何かを言いたげなようだった。

咲人様はそれ以上そのことに関しては追求せずに、
学校のことやたわいのない話題を幸人様に振り、
それにぽつぽつと幸人様が返す。
初めて見る二人の食事風景に皆珍獣でも現れたかのような顔をしていた。



「さてと、部屋に戻ってレポートするかな。」

一足先に咲人様が席を立ち、幸人様に挨拶をして食堂から出ようと歩き出す。

「兄貴」

幸人様がふと食堂の扉に手をかけた咲人様を呼び止めた。

「なに、幸人。どうした?」

幸人様は咲人様の方を見ずに俯いている。
咲人様が何も言わない幸人様に首をかしげて声をかけようとして時、幸人様が一度きつくその唇を引き結んだあと決心したように声を出した。


「…いままで、ごめん。
ほ、ほんとは、わかってるから。
兄貴が、俺を大事に思ってくれてるって。
…た、ただ、俺が、勝手に兄貴に負けたくないって思ってただけで…
あ、兄貴のこと、嫌いとかじゃないから。」


そう言って、真っ赤になって下を向く。
咲人様はその言葉に、本当に目が落ちるんじゃないかというぐらい大きく見開き、そして。

「…ばぁか、わかってるよ。俺は兄貴だからな。」

そう言って目頭を押さえ、震えだした。


どちらとも、お互いに近づくことなく。
やがて咲人様が静かに扉を開ける。



「…ありがとう、幸人」

小さくそう呟いて、食堂を後にした。


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