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「う…」
「…目が覚めたか」
ここはどこだ。
ぼんやりとする頭で声のした方を見る。
そこには、情けなく眉を下げた幸人様がいた。幸人様の顔を見た瞬間、ここが幸人様の部屋であることと自分がどうして倒れたのかを思い出す。
ゆっくりと起き上がろうとすると、体を押されてまたベッドに寝かされた。
「起きなくていい。…寝てろ。」
「も、うしわけ…ございま、せん…」
ちからなく謝罪する俺を見て、気まずそうに顔をそらす。
「お前は、女がだめなのか?…、男じゃないと…」
「…ゲイなのかっていう意味だと、違います。
ああ、でもそうなるんですかね。
俺、女の裸を見ると吐き気がするんで」
幸人様が眉間にしわを寄せたまま俺の方を向いた。
その目がどこか辛そうな、苦しそうな目で思わずじっと見つめる。
「すみません、命令を聞く前にこんな醜態をさらしてしまって。
…もう大丈夫です。あの人はまだいますか?
続きをしましょう」
大丈夫。俺は大丈夫。どんなことでもやってみせる。
今までの事に比べたら、なんてことない。目的を果たすためなら、どうってことないはずだ。
震える体を無理やり押さえ、ゆっくりと起き上がる俺をどこか切羽詰ったような顔で幸人様が見つめる。
「…だから、あいつなのか。」
「あいつって…?」
ぐい、と肩を押され起き上がっていた体をまたベッドに倒された。
幸人様が辛そうな顔で俺の上に覆いかぶさる。
何が何だかわからない。
一体さっきから何の話をしてるんだろう。
「…なぜ、だ…。そこまで、あいつがいいのか…?
あいつを守るためなら、何でもするのか!」
俺に覆いかぶさったまま、幸人様が辛そうに俺の横に置いた手でシーツを握りしめた。
何のことを言っているのかさっぱりわからない。
どうして幸人様はそんなに苦しそうなのか…。
「…俺が女がだめなのは、母親のせいです」
覆いかぶさる幸人様を見つめながらぽつりとこぼした。
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