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9

「幸人様」

扉を開けてその場で佇みこちらを凝視する幸人様。
その視線が、俺の額を触る滝沢の手に
送られると幸人様はみるみるその顔を怒りの表情に変え、ずかずかとこちらに近づいてきた。
滝沢が、慌てて俺の額から手を離す。

「ゆ、幸人様!どうされましたか、何かご用でしょうか」

滝沢がベッドの脇の椅子から弾かれたように立ち上がり、幸人様に向かって背筋を伸ばした。
幸人様はそんな滝沢を無視して、ベッドで上半身を起こす俺の腕をつかみ、無理やり引きずり降ろして歩き出す。
力が入らなくてもつれそうになる足を必死に動かす。

「幸人様!おやめください!」

滝沢が叫ぶと、幸人様は振り返って氷のようなまなざしで滝沢を睨んだ。

「貴様、使用人の分際で俺に命令するのか。
それほどこいつが大事か?」

ぐい、と俺を滝沢の方に向ける。

「堂島のかわりに私が行きます。ですから、今日は…」
「…なら、ここで裸になれ。
そして俺の前で自慰をしてみせろ」

幸人様の命令に滝沢が目を見開いて言葉を失う。
俺も思わず幸人様を見つめた。

何言いだすんだ。
一体どうしたってんだ。

「どうした。やらないならこいつを連れて行く」

滝沢は唇をかみしめて俯いた後、震える指でシャツのボタンに手をかけた。
俺は幸人様の腕を振り払い、滝沢に近づきその手を掴んで制止する。

「やめろ、滝沢。お前には無理だ」

滝沢が驚いたような顔で顔を上げて俺を見た。

滝沢にそんな真似をさせたくない。滝沢は、俺の補佐なんかでなければ執事としての能力を主人に認められエリートの道を突き進んでいたはずだ。
滝沢に、こんな暗い道なんて似合わない。汚れるのは、俺だけでいい。元から綺麗でもなんでもないんだ。これくらい、あの事に比べればなんともない。

にこりと微笑み、幸人様に向き直る。

「申し訳ございません。幸人様、参りましょうか」

そう言って頭を下げる俺を見て、眉間にしわを寄せたかと思うとくるりと向きを変えて扉から出ていく。
俺は無言で幸人様の後ろについて行った。


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