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1

何だかすごくあったかい。
それに、いい匂い。
これは一体なんだろうか。

俺は自分の腕の中にある物体を離すまいとぎゅうと抱きしめた。

「ひ…!」

…ん?
『ひ…』
ってなんだ。

なんだか変な生き物の声が聞こえる、
と思って閉じていた眼をゆっくり開けると、
目の前に真っ赤になって大きく目を開けたまま固まっている幸人様のどアップがあった。

「…オハヨウゴザイマス。」

寝ぼけた頭で、とりあえず挨拶をし、片手を伸ばして枕元の時計を手に取る。

まだ5時じゃん。
もう少し寝よう。
それにしても、この抱き枕超気持ちいいよな。

俺は腕の中にある暖かい抱き枕をぐっと引き寄せて顔を埋めた。



「もうしわけございませんでした」

ベッドに上に正座をして、棒読みで謝罪を口にして土下座する。
目の前には、シーツにくるまる幸人様。
一時間ほどして完全に目の覚めた俺は、まず目を開けて飛び込んできた幸人様のアップに驚いた。
幸人様をとんとんしていたら、知らないうちに眠っていたらしい。
ご丁寧に幸人様の寝ている布団にまで潜り込んで。

つまりあれだ、俺が抱き枕だと思って抱きしめていたのは幸人様で。
幸人様は幸人様で、抱きしめられて身動きが取れず固まっていたと。

起き上がって
「おはようございます」
と挨拶したら、真っ赤な顔をしてシーツにくるまってしまった。

あんだけ色んな男女と寝てるくせに、一晩寄り添ったことはないんだろうか。
意外に純な幸人様にくすりと笑いが漏れる。
その声を聞いて幸人様がシーツから目だけ出してじろりと睨んできた。

「あ、すみません。」

笑いを消して謝罪するも、またシーツにくるまる。
どうしよっかなあ。


「…お、お前は誰にでもああいう事をするのか」

どうやってご機嫌を直してもらおうかと考えていると、シーツにくるまる幸人様がこちらを見ずに問いかける。

…ああいう事って?

「ね、寝てる時に抱きしめる、とか…」

シーツの中からもごもごと歯切れの悪い言葉で問いかけてくる。

ああ、そういう事。

「しませんよ。
つか、誰かと寝るの自体ガキ以来ですね。
だから、あったかくて無意識に抱き着いちゃったのかも。
すみません。」

俺の答えを聞いた幸人様がシーツからそっと顔を出した。

「な、ならいい。」

そう言って、ベッドから降りて歩き出す。
扉の前でくるりと振り向き、俺を見る。

「何をしている。朝食だろうが、早くしろ」

なんだか機嫌がよさそうに見えるのは気のせいだろうか。

よかった、また機嫌が悪いままとか富原さんに怒られるからな。

幸人様の後を追い、寝室を後にした。


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