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3

二人、並んで空を見上げ遠く飛んでいく綿毛を眺める。
ふわり、ふわりと、綿毛が空を飛んでいく。道を歩く小さな女の子がお母さんと手をつなぎながら空を舞う綿毛を指さして笑っている。

「…今日」

ぽつり、と幸人様がつぶやいた。

「なんで、自転車で来なかった。
今日も自転車で来いと言っただろう」

視線をそらしながら、眉を寄せて俺に問いかける。

「え?いや、昨日の夕食の時咲人様に
『面白くなかった』
って言ってたから嫌なのかと思って。」

俺がそういうと幸人様は眉間にしわを寄せたまま俯いてしまった。

…もしか、して。

「今日車見て機嫌が悪くなったのって、
自転車じゃなかったから?」

幸人様の顔が途端に真っ赤になる。

「ち、違う!
べ、別に自転車でまた二人乗りがしたかったわけじゃ…!」

真っ赤になって必死に言い訳する幸人様を見て、不覚にも俺は

かわいい、とか思ってしまった。

くっくっと笑いが漏れる。


そうか。幸人様、嫌じゃなかったんだ。
楽しかったんだ。
咲人様に図星突かれて、恥ずかしかっただけなんだ。


「な、なにがおかしい!」

くすくす笑う俺を見て幸人様が真っ赤な顔で怒る。
でも、なんだかちっとも怖くない。

「すみません。
昨日の話聞いて、もしかしてほんとは嫌だったのかなって思っちゃって。よかった。
自転車気に入ってくれてたんだ。」

にこりと笑ってそう言うと、
幸人様は真っ赤な顔のままぷい、とそっぽを向いた。

「べ、別に嫌とは言ってない。」
「ですね。
じゃあまた乗ってきますよ。
雨の日以外は自転車で帰りましょうか。
…でも」

言葉を一区切りして空を見上げる。

なんてきれいな青空。
澄み渡る、とはこういうことを言うんだろうな。

言葉を途切れさせた俺を不審に思ったのか、幸人様がこちらを見る。


「…自転車乗ってこなくて、今日は正解ですね。
ね、幸人様。
たまには、こうやって歩きましょうか。」


空を見上げつぶやく俺に、幸人様も空を見る。

「…気が向いたらな」

空には先ほど舞い上げた綿毛がまだ少しふわりと飛んでいて。
二人でしばらく何も言わずに空を見ていた。


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