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「幸人様もやる?」
ふわり、ふわり、風に舞い飛んでいく綿毛を不思議そうに見ている幸人様に
はい、ともう一本綿毛を差し出す。
途端にものすごく怪訝な顔をされた。
俺と、差し出されたたんぽぽの綿毛を何度も見比べている。
いらねえ、ガキじゃあるまいし。
とかなんとかいうかと思ったが、幸人様は恐る恐るその手を伸ばし綿毛を取った。
ゆっくり口元に近づけ、大きく息を吸い込む。
と、綿毛が吸い込まれた勢いで幸人様の口に入ってしまった。
「うっ、げほっ、うえっ!」
慌ててぺっと吐き出す。
「くっ、、あはははは!」
その様子がおかしくて、思わず笑ってしまった。
幸人様は顔を真っ赤にして綿毛を強く握りしめる。
「あ、ごめんごめん。大丈夫ですか?
そんな近づけて吸っちゃいけませんよ。
綿毛、すぐ取れるから。はい、もっかい。」
どうぞ、と新たな綿毛を差し出す。
笑っちまったし怒って投げるかな、
とか思ったけどこれまた幸人様は怪訝な顔をしながら受け取った。
今度は息を少しだけ吸い込み、ぷっと勢いよく綿毛に向かって息をふく。綿毛は勢いが良すぎて塊で飛び、下に落ちてしまった。
「もっと優しく、そっと吹くんですよ。ほら」
新しいのをもう一本渡し、自分でも持って、ふぅ、と綿毛を吹く。
それに見習って、幸人様もそっと息を吹きかけた。
ふわり、と綿毛が空に舞う。
俺の吹いた綿毛と、幸人様の吹いた綿毛が混じり合って空高く舞い上がった。
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