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7

「なに?」
「…堂島、幸人様は…。
いや、なんでもない。気にしないでくれ。
…さっきはありがとう。助かった。」

にこりと笑う滝沢に俺もにこりと微笑みを返した。


その日の夕食時、幸人様と共に食堂に向かうと咲人様がすでに席についていた。

「やあ、幸人。こっちへおいで、久しぶりに話をしよう」

にこにこと笑いながらちょいちょいと手招きをすると、幸人様はあからさまに嫌そうな顔をした。

「てめえと話すことなんざねえよ」
「まあまあそう言わずに〜」

嫌がる幸人様を無理やり自分の隣に座らせる。
後ろにつくと、隣で黛が何が始まるのかとわくわくした顔で俺を見てきた。

「幸人と話をするのは久しぶりだね。
いつも俺を避けるからさ。ほら、乾杯。」

ドリンクの入ったグラスを渡され、嫌そうに一口流し込む。

「今日堂島君と自転車で二人乗りして帰ってきたんだって?
楽しかった?」

咲人様の言葉に、幸人様が口から先ほど含んだドリンクを噴き出した。

「げほっ、げほっ!んな、なん…!?」

激しくむせて涙目で咲人様を睨む。
咲人様はひどく楽しそうににやにやと笑っていた。

隣の黛がそんなことあったの?
とばかりにきらきらとした目を向けてくる。
やめれ。

「富原がひどく心配していたよ。
で、どうだった?初めての青春は」
「っ、うるせえ!何が青春だ!
仕方なしに今回乗ってやっただけだ、面白くもなんともねえ!」

真っ赤な顔をして叫ぶ幸人様を、ひどく楽しそうに咲人様が笑いながら見つめている。

「おやおや、幸人は素直じゃないね。
楽しかったのなら楽しかったと素直にそう言えばいいのに」
「…っ、た、楽しくなんか、ねえ!
この馬鹿執事が、車がねえって言いやがるから仕方なしだっつってんだろ!」

指さされた方を思わず振り返る。そんな様子を見て滝沢が『お前だお前』と小さく言ってきた。
あ、やっぱり俺だったのね。


幸人様の言葉を聞いて、俺はちょっと傷ついた。


…馬鹿みたいに笑ってたくせに。
しかたなしだったのか。


その後も咲人様は食事が終わるまで散々幸人様をからかって楽しんでいた。


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