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1

「あれ?」

翌日の朝、目覚めて俺は自分がベッドにいるのにきょとんとしてしまった。

昨日はめんどくさくなってソファで寝たはずなんだけど。
無意識にベッドに移動したのかな。
俺ってすげえ。

ぼんやりとしていると、寝室のドアがノックされた。
返事をすると、扉を開けて滝沢が現れた。

「ようやく起きたか。
幸人様の食事のときは席の後ろで待機していないといけないんだぞ。
早く来い」

ありゃ、そうなの。初耳なんだけど。

ベッドから降りて、滝沢と共に部屋を後にする。
食堂に向かう途中、滝沢が変な目で俺を見てくるので何だと見つめかえしてるとちょいちょいと滝沢が自分の体を指さした。

「…鏡を見たのか」

ん?

言われて自分の格好を見る。
あ、昨日この服のまま寝ちまったんだっけ。
よれよれになってズボンから出ているシャツを中に押し込み、緩めていたネクタイを締め直す。


食堂につくと、扉を開けてすぐに高田と黛が立っているのが目に入った。黛が俺に気付き、小さく手を振る。それに俺も小さく手を振りかえすと黛は嬉しそうに笑った。
その前の席に、初めて見る男。

長男の咲人様だろう。
とても美しく整った顔をしており、優しげな雰囲気を醸し出している。

「やあ、おはよう。」

とてもにこやかに、穏やかに挨拶をしてくれた。
おおう、王子様スマイル!キラキラ輝いて眩しいぜ!

「おはようございます、咲人様」
「おはようございます」

頭を下げると同時に、食堂に幸人様が現れた。

目の上が腫れ、左ほほには青あざ。
口元も切れた跡がある。

ま、俺も似たようなもんだろうけど。
昨日結構本気でやりあったからなあ。

「おはようございます、幸人様」

滝沢と共に頭を下げると、じろりと一瞥して席に着く。

挨拶できねえってガキかよ。
ガキの方がちゃんと挨拶するんじゃねえの。

「…ガキで悪かったな」

幸人様がぎろりと俺をにらんできた。
周りを見ると滝沢は手で顔を押え、黛は肩を震わせ笑いを堪えている。高田も目を見開いてこちらを見てるし、咲人様も俺を見ていた。

あら。口に出ちゃってたみたい。

「おはようございます、幸人様」

仕方ないので、もう一度幸人様の目を見ながらわざとらしく挨拶をしてやった。

「…ああ」

俺の独り言にプライドが傷つけられたのだろうか、そっぽを向きながら一言だけ返してきた。
それを見たその場にいた皆が、ぽかんと口を開けた。

「くっ、あははははは!」

咲人様が急にテーブルを叩いて大声で笑いだした。

「いやあ、びっくりだ。まさか幸人が返事をするなんてね。」
「…」

くっくっと笑い続けながら涙を拭う咲人様を幸人様が無言で睨む。
咲人様はひとしきり笑い終えた後、俺に視線を向けた。

「黛から面白い奴が入ったって聞いたけど、ほんとだね。
君、名前は?」
「堂島正明と申します。」

ぺこりと頭を下げると、咲人様はにこりと笑い俺の手を握った。

「俺は長男の咲人。よろしくね?」
「はあ…」

にこにこと握手をされ、間抜けな声が出た。

幸人様とはずいぶんタイプが違うんだなあ。

ぼんやり考えてなされるがまま握手を交わしていると、幸人様ががたんと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。

「ゆ、幸人様、どうなされましたか?」

滝沢が慌てて引き留める。

「飯はいらねえ。…行ってくる」

うーわ。
なんなの幸人様こんなうまそうな飯目の前にして食わないとかばかなの。朝飯食わないと力出ないのに絶倫なのに飯抜きでかわい子ちゃん相手にできるの。
あ、そうなると真っ最中にバテちゃったりなんかしちゃったりして途中で萎えてインポのレッテル貼られたりしてそれはそれでおもしろいかも

「ぶ、あっははははは!あはははは!」

突然目の前の咲人様が腹を抱えて笑い出した。
なんだ、何が起こった。
きょろきょろ周りを見渡すと高田は落ちそうなほど目を見開き、黛は口を押えて必死に笑いを堪えてる。
滝沢は真っ青な顔で俺を見てるし、幸人様は…

「…っ早くコーヒーを淹れろ!!」

一言怒鳴るなり、元の席にどすんと座った。
滝沢が急いでコーヒーの用意をする。
幸人様は真っ赤な顔で俺を睨んでいた。

あら、またやっちゃった?
俺って考えることが口から出ちゃうみたいだね。
ま、それはそれでしょうがない。
平然と幸人様に給仕をする。羞恥なのか怒りなのか、まだ顔が真っ赤なままでちょっとかわいいとか思ったりして。

咲人様はさっきからまだ馬鹿みたいに笑ってる。

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