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7

「…啓太君、久しぶり。」



僕に気づいた桜庭さんが、近付いてくる。
少し痩せた…?
顔も、何だかやつれてる。

「…あの時のこと、ちゃんと話したくて…」
「っ!ご、ごめんなさい!勝手に髪の色とか染めてもらっちゃって、お店の人の手を煩わせるだけになっちゃって、桜庭さんたちの雰囲気悪くしちゃって!
に、似合いもしないのに、バカですよね。ほんと僕、ただのカットモデルなのに甘えちゃって、なにしてるんだろ。
ちょっとでも、桜庭さんみたいに格好良くなれるかなって、自信がもてるかなって…」


桜庭さんにまた似合わないと改めて言われるんじゃないかと怖くて、一気にしゃべる。
桜庭さんに改めて言われたら、もう立ち直れない。

「ご、ごめんなさい!さよなら!」

無理やり会話を終わらせて、家の中に駆け込もうとしたら、桜庭さん腕を捕まれた。



「啓太君。今日、閉店後お店に来て。」

真剣な顔で、僕を見る。
「…っ、な、んで…」
「お願い。待ってるから。
……啓太君が来てくれるまで、何時間でも待ってる。」



そう言って腕を離すと、振り返りもせずに歩いていった。

捕まれた腕が、灼けるように熱い。
心臓も、早鐘のようだ。


それから僕は、家に入ってベッドに伏せている。もう夜の23時だ。
お店は19時に終わるから、4時間は経っている。

桜庭さんは、ずっと待ってるって言ったけど、さすがにそんなに待ってないだろう。
怖くて動けなかったけど、誰もいなくなった店を見たなら。

…今度こそ、諦めがつくかもしれない。



僕は、ゆっくりコートを手に取った。

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