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「真也…ありがとう…」
「落ち着いた…?」
お礼を言う僕を、真也がそっと覗き込む。
「うん、あの…どうして、今日あんなことされてるの、わかったの?」
危ない所だったけど、偶然にしてはタイミングがよすぎた。おかげで僕は助かったんだけど。
疑問を口にすると、真也は気まずそうに頭をかいた。
「うん…、いや、怒られるの覚悟で言うけどさ。さっきあいつに盗聴器を投げただろ?」
そういえば、内容は録音させてもらったって言ってた…てことは…
「そう、創に盗聴器が付けられてるのはだいぶ前から知ってた。付き合ってしばらくしてからかな?お前の肩のゴミを取るふりをして、見つけたんだ。それがさっきのやつ。」
そんな前から…!改めて、ぞっとする。でも、その時に取ったならどうして?
「そのときには、もうあいつのおかしな行動はこちらで調べがついてたんだ。
…今、そんな前に取ったならなんでってちょっと疑問に思ったろ。今だからバラすけど、あいつが創に仕掛けた盗聴器はそれ一つじゃなかったんだ。多分一つじゃ落ちたりするかもって心配だったんだろう。創に付けられていた盗聴器は、全部で3つ。更に、創の部屋には隠しカメラと盗聴器が、それぞれ3つ仕掛けてあった。」
…カメラまで。知らされた事実に、全身から血の気が引いていく。
「…ほんとに申し訳ないんだけど、一つめを見つけてから、残り全ての盗聴器はこちらで周波数を割り出してそのままにさせてもらった。あ、ちゃんとプライバシーは守ったよ?
寝てるときとか、部屋に一人でいるときとかは聞いてない。創があいつといるときだけ、こちらでも盗聴させてもらってたんだ。
それに、盗聴内容を聞いたりするのは俺だけって決めてた。
調べた限りあいつはひどく狡賢くて、絶対にボロを出さないし証拠も残さない。いつかあいつが創自身に何かを仕掛けるときにしか、行動を起こせないと判断したんだ。
例えば創が寝てるときに何かされたら終わりっていう、すごく危険な賭けだったんだけど、それしか方法がなかった。」
真也が、すっと僕の頬を撫でる。そしてそのまま、ふれるだけのキスをした。
「今日別れた後、部屋に帰ってすぐに盗聴器のスイッチを入れたら創があいつに押し倒されてるところで。慌てて部屋から飛び出したんだ。
ほんとに、間に合ってよかった…」
真也がぎゅっと僕を抱きしめる。
…あたたかい。
僕を抱きしめる真也の体が少し震えてた。
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