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「おかえり」
部屋に入ると、玄関を開けてすぐに新が立っていた。
無表情で言われ、少し身じろぐ。
「た、ただいま…」
新は無表情のまま、じっと僕を見つめてくる。
…なんだろう。なにか、怖い。いつもの新じゃない。
早く自分の部屋に戻ろうと、新の横を通り過ぎようとした瞬間。
新に突然腕を掴まれた。
「な、なに…」
無表情のまま、ぎりぎりと力をこめてくる。
「…真也とキスしたでしょ。」
新の言葉に、ドキリとする。なんで。
はっとして、ドアを見る。さっき僕は、この部屋の前でキスされた。まさか、
「ドアスコープから、覗いてた…の?」
新はにこりと微笑んだ。だが、目が笑っていない。掴まれた腕にさらに力がこめられてくる。
――――――――怖い!
「新、離して…」
震える声で訴えると、新は僕を廊下に押し倒した。
「うっ、げほ…!」
思い切り倒されて、背中を打ってむせる。
新はそのまま僕の上に馬乗りになり僕を見下ろした。
「あらた、なに…」
怖くて怖くて、震えながら新に声をかける。
「…どうして、キスしたの。だめじゃない。」
新の言葉に、はっとする。もしかして、新は僕から話を聞いてもう真也が好きになってたんじゃないか。だとしたら、真也とキスしてる所なんて見たらそれは怒るに違いない。
どうしよう、そのせいで新が真也を振ってしまったら…!
「ご、めん。ごめん、新…。真也は、悪くないんだよ。僕が、
……―――――――んんっ!」
謝る僕に、新がゆっくりと覆い被さりキスをしてきた。
「んっ、んぁ…!んぅっ、ん――――!」
深く深く口づけ、舌を入れ逃げる僕の舌を執拗に追いかけ絡ませてくる。
いやだ、なんで…!
ガリッ!
「…っつぅ…!」
思わず新の唇を噛んでしまい、新が離れる。唇から流れる血を、新がペロリと舐めた。
「悪い子だね、創。だめでしょ?真也はよくて、なんで僕はだめなの。せっかく、せっかく創が誰からも好かれないように僕がずっと周りを排除してきたのに。創が誰も好きにならないように、創にも劣等感を植え付けてきたのに。」
クスクス笑う新に、驚きで目を見開く。
新は笑いながら、僕の体をゆっくりと撫で回した。
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