3
走って家に帰った僕は、彼にメールを打った。
『しばらく距離を置かせてください。ごめんなさい。』
送信した後、電源を落とす。
携帯を置いて、ベッドに顔をうつ伏せた。
ああ、だめだ。考えれば考えるほどイヤになる。
なんて子供な自分。こんな些細なことで、すねて不安になって。彼はどう思ったろう。めんどくさくなったんじゃないだろうか。
自分から距離を置きたいと送ったくせに、もう後悔してる。
もやもやと考えながら、うとうととしかけたら、窓にコツンと小石が当たった。
覗いてみると、彼がいた。
慌てて、カーテンを閉める。どうしよう。怒ってるだろうか。もう呆れられただろうか。
怖い。直接、彼に言われたら。
僕は卑怯者で臆病者だ。
一時間、二時間。時間だけは刻々と過ぎていく。さすがにもういないだろうと、そっとカーテンを覗くと寒空の中彼が街灯に照らされ佇んでいた。思わず、走り出す。
「孝明さん!」
駆け寄る僕を、彼はにっこりと笑って抱き締めた。
「やあ、アマテラスさま。やっと天岩戸から出てきてくれた。」
抱き締める彼の体は、冷え切っていた。
「どうして…、こんな寒いのに、僕、僕…」
ごめんなさい、ごめんなさい。
ぼくなんかの為に、こんな。
何度も何度も謝る僕に、彼は抱きしめる腕を強くする。
「謝るのはこっちの方だよ。ごめんね、今日の会社の前で僕が君を『従兄弟だ』って言ったから不安にさせちゃったんだよね。」
びくりと、体が硬直する。
気付いてたんだ。
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