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まずいとは思って、踵をかえしたんだけど、向こうが僕に気づいて声を出した。
「洋二!?」
「ご、ごめんなさい。連絡があるまで近くでぶらぶらしようと思ったら、まさか孝明さんに会うなんて」
しゅんと頭を下げる僕を見て、周りの人たちが彼に質問した。
「誰ですか?佐山さんの弟?」
「かわいいですねー!紹介してくださいよ〜」
「違うよ。彼は、ただの従兄弟。ご飯をごちそうする約束をしててね。」
『ただの従兄弟』
その言葉が、ずきんと胸に刺さった。
「…まだ、仕事なんですよね。今日はやっぱりいいです。僕も用事あるの思い出したし、帰ります。サヨナラ。」
「えっ?洋二?」
それだけ言い捨てると、彼の返事を聞かずに走って逃げた。
わかってる。彼は、社会的に立場のある人で。高校生と、しかも平凡な男の子の僕と付き合ってるなんて知れたら大問題だ。だから、あんな言い方をしたんだろう。
それでも、だめだった。
僕は、自分に自信がない。彼はとても素敵な人だから。会社でもすごくもてるはず。
いくら頑張っても、年を追いつくことはできない。
彼に、僕はふさわしいのだろうか。迷惑になってるんじゃないだろうか。
「…はやく、大人になりたい…」
大人になって。彼の隣を堂々と歩けるような人間になりたい。
変えることのできない現実が、ただただ歯がゆかった。
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