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「はあ…」

海星はこの日一人とあるカフェテラスでげんなりした様子でテーブルにつき本日幾度目かになるため息をついた。

「ど〜したの〜?めっちゃ黒い雲しょってるね!」

ポン、と後ろから背中を叩かれて振り向くとそこには周りの人を魅了する爽やかな笑顔を浮かべにこにことご機嫌な様子でよ、と手を上げる一人の男。

「冴葉さん…聞いてくださいよ〜!」
「うわ!なになに、どしたの!」

うわあああん、と泣き叫んで、海星は声をかけてきた男にひっしと抱きついた。

「へえ〜、また負けちゃったんだ?」

にこにことさも楽しそうに笑いアイスコーヒーを飲む彼は、結城冴葉。かの有名な結城財閥の分家の長男だが、結城家一門の事業には全く関係のない保育士になりたいと自分の道を貫くために全ての権利を投げだしてまで自分の夢を掴んだ強者だ。

海星がバイトするバーにたまたま睦月と訪れた冴葉を見かけた海星が、カウンターに座る睦月の様子がおかしい事に気付いて声をかけた。真っ赤になって小さく首を振る睦月に、隣を見ると若干いじめっ子のような顔をした冴葉。

その後真っ赤になって震える睦月を支えながらトイレに向かった冴葉を見て、気分が悪かったなら…と心配した海星が二人の後を追って男子トイレに行った時に、個室から何やら小さな声が聞こえた。

『おね、が…っ、も、ゆるし…』
『ふふ、睦月さんかーわい。さっきバイトの男の子に話しかけられて余計に感じちゃった?ローター入れてるここ、締めちゃったんでしょ。真っ赤になっちゃって震えちゃってたまんなかったなあ』

慌ててトイレから飛び出し、自分の持ち場についた海星のいるカウンターの同じ席に戻ってきた二人。睦月は真っ赤になって若干涙目だが、冴葉は何食わぬ顔をして海星を見て、人差し指を口に当て、口元で『内緒、』と言うとウインクした。

『ま、待ってください…!お、お願いがあります!』

そんな冴葉を帰りに引き止め、ご指導してください!と言ってがばりと頭を下げたのが始まりだ。



それから、海星はことあるごとに健吾とのことを冴葉に相談して話を聞いてもらっている。今日も、昨日の夜にまんまとしてやられた海星が冴葉にまた助言をもらおうと呼び出したのだ。

「へえ、上手くいかなかったんだ?」
「は、はい。以前冴葉さんが教えてくれたみたいに、リードを取られた時に言ってみたんですよ。『俺の事を翻弄するなんて悪い子ネコちゃんだね、お仕置きするよ?』って。言われた通りに言ったんですよ!でも、でも、その後健吾さん、ニヤって笑って、『お仕置きねえ?できるもんならやってみな』って…そんで、そんで結局上に乗っかられて…うう〜!」
「ああ、よしよし。海星君はまだまだ甘いねえ」
「ぐはっ!」

がばりと顔を伏せて泣く海星を慰めつつもとどめをしっかり刺す冴葉は鬼畜だと海星は思った。

「そんな海星君の為にさ、今日はもう一人絶倫なタチの中のタチな知り合いを紹介するよ!二人で講義したげる!」
「へ…?」

にこり、と笑った冴葉はおもむろに立ち上がると海星の後ろに向かって大きく手を振った。

「お〜い、こっちこっち!」
「遅くなりまして申し訳ございません。」

二人の席に近づいて、とても礼儀正しく謝罪を述べたかと思うと海星に向かって初めまして、ととても綺麗な挨拶をしてきた超絶美形な男に海星は思わず立ち上がってぺこぺこと頭を下げた。

「海星君、この人、藤井弘斗さん。結城家本家の長男さんの秘書さんだよ。」
「…!そ、そんなすごい人に、講義をなんて」
「いいんですよ、海星さん。それに、すごいのは結城家の方たちであって私ではありません。私はただの秘書にすぎませんし、今この場ではあなたと同じただ愛する妻をどうやって辱めて…おっと、可愛がってやろうかといつも考えているただの一人の男ですよ」
「弘斗さんもなかなかすごいよ、海星君。なんせ俺たちが初めて出会ったのはアダルトグッズコーナーだったしね」
「ええ。一つしか在庫がない遠隔操作型のローターをお互い同時に取ったのが始まりでしたね」

にっこりと誰もが落ちるであろう笑みを浮かべながら口にした言葉に海星はああ、この人も冴葉さんと同類かと少し残念に思ったことは内緒だ。

「それで、どうなさったんですか?」
「海星君たらね、いつもお嫁さんにリードを取られて悲しいんだって。昨日も上に乗っかられてやりたい放題されちゃったんだよね?」
「は、はい。ぬか六で、おれ、限界来ちゃって…体力でも負け負けで」
「それはいけませんね。タチなら10回は薄くならずに出せないと」
「10…!?」
「そうだよ。出し切ったあとの爽快感が溜まんないのに〜!」

けろっとしてとんでもない回数を口にする二人にますます落ち込む海星。そんな海星をよそに、二人はそのままいつもどんなプレイをしているか、どうやって嫁を快楽責めにしているかを語りだした。



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