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7

長い、長い悪夢を見ていたような気がする。暗い中、光がその先にあるのにどれだけ手を伸ばしてもつかめない。

もがいてももがいても、光は自分に近づくどころかどんどん遠ざかっていく。

だけど、ようやく。



「…ぱい、…、先輩…!」

ぽたぽたと自分の顔に落ちてくる水滴に閉じていた目をゆっくりと開ける。とめどなく涙を流しながら、自分をのぞき込むその顔にそっと手を伸ばす。

「…泣かないで、紫音ちゃん…」
「…!」

声をかけると大きく目を見開いて自分を見つめる。晴海はゆっくりと体を起こし、キョロキョロと辺りを見渡した。

学校の中庭だと気付いて、晴海が両手で頭を抱える。



―――夢じゃ、なかったんだ。



紫音に向かって殴りかかったあのとき。紫音が、すべての抵抗をやめて自分に向かい両手を広げた瞬間。手の届かないところにいた光が目の前に現れた。

『大好き』

自分に向けて微笑みと同時に放たれた言葉は、よりいっそうまぶしい光になって目の前に現れる。その瞬間に、求めていた光がはっきりと紫音を形作る。

『…っあああああ!』

それと同時に、頭を激しい痛みが襲い、晴海は叫び声をあげてその場に倒れたのだ。真っ暗な中、閃光のように火花が散り大きな火花がはじけるとその中に人が現れる。

それは、出会ってから今までの記憶の火花。

ゆっくりと浮上する意識の中で、晴海は全てを思い出し…暗闇の中、夢だと叫びたかったこともまた、間違いなく自分がしたことなのだと、目の前で泣く紫音を見て思い知らされたのだ。

「先輩…、先輩…」

自分を呼びながら震える紫音を、そっと抱きしめる。

「…ごめん、ね。ごめんね…、紫音ちゃん…」
「…っ!」

耳元で、紫音が息をのむ音が聞こえ晴海は抱きしめた腕にぐっと力を込める。

「ほんと…、謝って済まされるもんじゃないってわかってる…!俺…、俺…っ」
「せんぱい…」

病室で目覚めてからの自分を思い、がくがくと体が震えを起こす。

紫音。紫音。

誰よりも愛しいはずだったのに。誰よりも大事に、守ってあげようと誓ったはずなのに。自分が、一番この子を傷つけてしまった。それも、最低なやり方で。決して許されるべきではない行為で。

目の奥から、熱い物が込み上げてきて止めることもできない。どうすれば。どうしたら、この罪は消すことができる?

紫音にしがみつき、嗚咽を耐える晴海の両頬にそっと紫音が手を添える。少し上にあげて涙を流す自分を見つめると、紫音はその顔にへにゃりと優しい笑みを浮かべた。

「…おか、えりなさい…。はるみ、せんぱ…っ、おかえりなさい…!」
「…っ、し、おんちゃん…!う、うぐぅ…っ!」

微笑みながら、ボロボロと泣く紫音にそれ以上に泣きじゃくりしがみつく。そのぬくもりに、失っていたものをようやく取り戻すことのできた晴海は紫音が笑いながら『苦しい』というまで必死にしがみつき続けた。

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