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「お、お前が、笑顔がかわいいって、言ってくれて嬉しかった。
け、結果は、やっぱ、だめだったけど…。
あの、一言だけで、充分だよ…」
抱きしめた小暮の体が震えている。
小暮。小暮、小暮、小暮…!
「ごめんな、小暮……本当にすまない…。お前が、俺にうそつきって言うのも当たり前だ。俺は、ずっとお前を傷つけてたんだな…」
「綾小路…「でも!」
抱きしめていた小暮の両肩をつかみ、がばりと顔をあげ正面から向かい合う。
「お前を傷つけてばっかだったけど!うそつきって思うかもしれないけど!今更かも知れないけど!き、嫌いって言うのも仕方ない…いや、ほんとはすごくイヤで仕方なくなんかないんだけど仕方ないけど!」
俺も、俺の本気をお前に。
「――――好きなんだ!!
お前が、好きだ!!」
小暮を見つめ叫ぶ。
どうか、伝わりますように。
「頼むから…、ほんの少しでも、まだ俺を思ってくれるなら」
お前のためなら、俺のプライドなんてくそくらえだ!
俺は、小暮に向かって土下座した。
「あ、綾小路…!?」
「俺が、傷つけた分愛するから!
何度でも伝えるから!
―――――俺に、お前を愛させてくれ!!」
手遅れだなんて思いたくない。
絶対に、もう一度お前を手に入れるから。
手をつきながら、顔をそっと上げて小暮を見る。
「…っ、あ、やの、こうじ…、し、信じても、いいのか…?」
無言でゆっくりと頷く。
「お前が好きだ、小暮。」
もう一度言うと、小暮はぼろぼろと泣きながら、何度も頷いた。そして、
「………………俺も、好き。綾小路、好き…!」
俺を落としたあの笑顔で、そう言った。
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