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「ひっ、く、っ、くび、なんか、ちくってした。う、うぇっ、そ、その後、な…っ、なめ…っ…うぅ〜っ!」
こわい、こわい、こわい。涙は全然止まらなくて、さっきの事を思い出して、体ががくがくと震える。言うなり一夜が、無言で素早く俺の顎を掴んで上に向けてさっき舐められた首元を覗き込む。
「…あの野郎…殺してやる」
ぼそっと呟いたので、はっきり聞こえなかった。でも、首元を見た一夜のオーラが一瞬で黒くなったのはわかる。
こんな怒っている一夜を見たのは、初めてだ。
「いち、いちや、ごめ、ごめん、ごめんなさい」
何に怒ってるのかわからなくて、怖くてしゃくりあげながら必死に謝る。
「違うよ、和ちん。和ちんは何にも悪くないよ。和ちんに怒ってるんじゃないからね。
ちょっと待っててね」
いつものようにふにゃんと笑い、よしよしと俺の頭を撫でて部屋を出ていく。
戻ってきた一夜の手には、消毒液とタオル。
消毒液をタオルに浸し、俺のほっぺたと首をごしごしと一生懸命拭き始めた。
「あの野郎、よくも和也に…くそ、むかつく!
絶対殺してやる!いや、死ぬよりもつらい目に合わせてやる」
拭きながら、ぶつぶつと物騒なことを呟く一夜。
一夜が、俺のためにここまで怒ってくれてる。
それがすごく嬉しくて、胸がじんと熱くなる。
「一夜…、ありがと…。そんなに怒ってくれて、さっきも助けてくれて、庇ってくれてすごく嬉しい」
ぽろぽろと泣きながら、感謝の気持ちを口にする。
「当たり前じゃん!恋人泣かされて、黙ってなんてらんないよ!」
「…………は?」
一夜の一言に、涙が引っ込んだ。
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