×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




5

「いち、や…」

うずくまる男の先に、無表情で男を見下ろす一夜がいた。


「ねえ、おまえ、和也に何したの?」

男が、ひ、と息をのんだ。


「和也」


一夜が俺の前に立つ。
先ほどの無表情とは違い、優しい目で俺の名前を呼ぶ。

「和、大丈夫だよ」
「…い、ちや…っ、一夜あ…っ!」


優しく両手を広げる一夜に抱きつき、俺はぼろぼろと泣いてしまった。


「なになに、どーしたの?」
「うわっ、佐伯どうした!?」


俺を襲ったイケメンは、佐伯と言うのか。


騒ぎに、リビングにいたみんながかけつける。
みんなが見てるのに一夜は俺を胸に抱きしめたまま離さない。
俺も、見られてるというのに涙が止まらず、しゃくりあげて泣いてしまっていた。

「ってぇな、殴ることねえだろ!ちょっとからかっただけじゃん」

ちょっとだと?お前はちょっとで人を犯そうとするのか。

「え、なに、佐伯もしかして和也君に手え出そうとしたの?」
「うわ、さいてえ〜。つか相手選べよなあ」
「ていうかさ、佐伯いつものことじゃん、ちょっといたずらがエスカレートしたくらいだろ?和也君もそれくらいで泣いちゃうんだ?」
「そ、そうだろ?一夜ってば本気で殴りやがんの。俺だって本気で和也君みたいな地味男くん相手にしないっつの」

…酔ってるとはいえ、めちゃくちゃだ。こいつら、最悪。
悔しくて悔しくて、唇を噛み締める。

「いつものこととか、それくらいとか関係ない。お前ら人をバカにしてんのか。
和也が泣いた、それだけで俺がキレる理由は十分だ」

いつもの、ゆるゆるとしたしゃべり方なんかじゃない。
酷く冷たく、聞いてるだけで震えそうな恐ろしい声で一夜が言い放つ。


「―――帰れ、二度とくんな。つか、二度と俺と和也の前に面見せんな」


バタバタと、部屋を出て行く気配がした。


一夜は、なかなか涙の止まらない俺を抱きしめながら寝室に連れて行き、ゆっくりとベッドに座らせた。

「和也、何された?どこ触られた?」

よしよしと頭を撫でられる。

「和也」

言え、と無言の圧力を感じる。


「…うっ、く、、き、キスされそうになって、よ、避けたらほっぺたに、」
「それから?」


どうやら全部言わなきゃ許してもらえないらしい。

[ 19/283 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
トップへ戻る