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「うわっ、和ちんごめん!タオルタオル!」
俺の肩を組んでるイケメンくんを、慌てて一夜が引き剥がしタオルで俺の服を拭く。
「いいよ一夜、俺脱いでくるから」
眉を下げて情けない顔で謝りながら俺を拭く一夜に、にっこりと笑いかけて立ち上がり、洗面所へ向かった。洗面所は、リビングの扉を出て玄関につながる廊下に面してる。パジャマ代わりにしてるTシャツが置いてあるから、それを着よう。
洗面所で濡れた服を脱ぐと、後ろの洗面所の扉から人が入ってくる気配がした。一夜かと思って振り向くと、そこにいたのはさっき俺に絡んできたイケメンくんだった。
「…なんですか?」
「いや、酒ぶっかけちゃってごめんね?って思ってさ。」
「や、気にしないで下さい。着替えればすむことなんで」
イケメンくんは、洗面所の扉前に立ったままこっちをずっと見てくる。
じっと見られて、何だかイヤな感じだ。
「…あの、俺も着替えてもう出ますんで…」
「和也君さあ〜、色白いよね。線も細いし、ぎゅってしたら折れちゃいそう」
クスクス笑いながら、一歩近付いてくる。
「あ、の…」
何だか怖くて、思わず一歩下がる。
「ね、ほんとに一夜とはただの幼なじみなの?あいつ手早いんじゃないの?和也君、一夜にやられちゃったりしてない?」
ニヤニヤ笑いながら近付いてくるイケメンくんのセリフに、かっとなる。
「い、一夜はそんなことしない!」
「あれ〜?そうなの?じゃあ和也君、色々溜まっちゃってんじゃないの〜?」
少しずつ近付いてくるのに合わせて下がっていたら、後ろの壁にぶつかった。
顔の両脇に手をつかれ、閉じ込められる。
「ど、いてください」
自分の置かれてる状況が飲み込めない。
目の前にいるイケメンが怖くて、声が震える。
「オレね、バイなの。和也君みたいなの、ちょっとタイプなんだよね〜。いじめたくなるタイプ?なあ、ヤラしてくんない?」
ニヤニヤと笑いながら、とんでもないことを言い出した。
「い、いやに決まってんだろ!どけ!」
慌てて押しのけようとする手をあっさり掴まれ、壁に縫い止められる。
「くそっ、はなせ、離せよ!」
もがいてもちっとも動かない。
マジでやばい。
「だぁめ〜。せっかくこんなおいしそうなかっこしてくれてるんだし?」
男の一言にはっとする。オレ、今上半身裸だった!
かあ、と顔に熱が集まる。
男の顔がいつの間にか目の前にあった。
――キスされる!
慌てて顔を背けると、頬にそいつの口が当たった。
「あー、何避けてんの?むかつくー」
「むかつくのはこっちだ!いいかげん離せ!向こうにみんないるんだぞ!」
「だぁいじょうぶだって、みんな酔ってんだから二人くらいいないの気づかないって」
「う、あ!」
首に顔を埋めたと思ったら、ちくりと痛みが走った。
「っ、やっ!」
そのあと、ねっとりと舐められる。
いやだいやだいやだ、気持ち悪い気持ち悪い!
「あは、感じた?」
なわけねーだろ!
暴れても暴れても、びくともしない。マジでやばい、こいつ本気か!?
「ね、諦めて楽しもうよ。オレ結構巧いよ、めっちゃ気持ちよくしたげるからさ」
ニヤリと笑い、再び顔を近づけてくる。
「い、やだ…、
――助けてっ、一夜!!」
ドガッ!
という音と共に、目の前から男が消えた。
「――――なにしてんの?」
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[mokuji]
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