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3

野々宮と別れ、アキラは一人教室に向かっていた。放課後遅いので、もう人影はまばらだ。階段を降り、踊り場を曲がろうとしたところで下から上がってきた人とぶつかってしまった。

「きゃっ!」
「あっ、ごめん。」

駆けあがってきた相手とぶつかり、よろけてしまったが、相手は勢いがついていたせいか転んでしまった。

「ごめん、よく見てなくて。大丈夫?」
「…大丈夫、です。」

差し出した手を見上げた顔は、まさに先ほどまで話題にしていた人物。崎田晃だった。一瞬ぴたりと動きを止めてしまう。いけない、普通にしないと。相手は俺を知らないんだし。

「立てる?」

我に返って声をかける。その時に初めて、崎田が自分をじっと見ているのに気付いた。穴が開くという表現がぴったりなほど、崎田は自分をじっと見つめる。

「あの…」
「あ、ぼくこそごめんなさい。」

崎田はアキラの手を取り、立ち上がろうとした。

「あきら!」

その時、崎田の駆けてきた方から誰かが上がってきた。…今の声は。アキラがそちらに気を取られ、『あきら』と呼んだ人物がちょうど上がってきた瞬間。崎田はがくりと崩れ落ちた。

「おっと、あぶね!」
「!あきら!どうした!?」

咄嗟にアキラが崎田を支える。と同時に、もう一人も崎田を支えようと駆け寄った。

「…薬師寺君」

そこに現れたのは、太陽だった。


崎田は、太陽にしがみつき痛そうに眉をよせる。

「あ、足が…。」
「くじいたのか?」
「せ、先輩は悪くないの!僕がどじだから…!」

…おいおい。その言い方じゃ聞く人が聞いたら誤解するだろうがよ。
崎田がうるうると太陽を見つめ言う姿に、アキラは思わずぽかんとする。

「あっくん?…なにかしたの?」

崎田を支えながら言った太陽に、愕然とする。

「…なんだそれ。俺がお前の恋人にわざとけがさしたとでも言いたいわけ?」
「!ち、ちが、そういう意味じゃないよ!」
「じゃあどういう意味だよ。お前今そいつの言うこと聞いて俺が何かしたのかって聞いたじゃん」

いらいらと太陽に当たる。

「だから!俺はあきらがあっくんに…」

太陽は必死になってアキラに誤解だと訴え、言い訳をしようとしたときに崎田がうるうると悲しそうな顔を向け太陽の言葉を遮った。

「ご、ごめんなさい!先輩、僕の言い方が悪かったんです!許してください、本当にごめんなさい!」

うーわ。なんじゃこいつ。
崎田の態度を見たアキラの正直な感想はそれだった。途端にめんどくさくなったアキラは、はあ、と一つため息をついた。

「いや、そんなに謝られるとこっちも困るんだけど。もういいよ、俺もちゃんと見てなくて悪かった。太陽、そいつ保健室連れてってやれよ。じゃあな。」
「あっくん!」
「痛っ!」

崎田に謝罪をし、背中を向けて去っていこうとするアキラを太陽が引き止めようと呼びかけて崎田から離れ駆け寄ろうとした瞬間、崎田はとても痛そうに足を押さえその場にうずくまった。

「ほら、そいつ歩けなさそうじゃん。おぶってってやれよ。」

振り返り、崎田を指さすアキラと、うずくまる崎田の間でおろおろとする太陽。

「ばかやろう。俺なんかより恋人大事にしてやれっての。」

アキラはそう言って太陽ににこりと微笑みかけ、踵を返しその場を去った。

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