バイクは夜風を切って走っていく。


「ねぇクラウド」

「何だ」

「前した話、覚えてる?クラウド大分酔ってたと思うけど」

「あれくらいで酔わない」

「分かった分かった。どう?クラウドはやっぱりティファのこと・・・好きなんだよね?」

「・・・よく分からないが、名前がそう言うならそうなのかもしれないな」

「なにそれ」

「自分ではよく分からない」

「それは昔からティファのことしか見てこなかったからじゃない?きっと昔からティファのことが好きなんだよ」

「名前がそう言うのなら、そうなのかもな」

「それさっきも聞いた」

「もうこの話はいいだろう。何だかムズムズする」

「それが恋だよクラウド・・・」


すると、前を走っていたジェシーが大きな声を上げた。


「IDスキャン、来る!」


検問であろう場所を通過したけど、何の警報音も鳴らない。

お、これは無事成功かな。


「今は問題なかったけど次から厳しくなるから!・・・偽造IDで身元はバレないけど、こんな時間にスキャンがあったら・・・警備が動く!」


そのジェシーの言葉に私はスナイパーライフルを手にかける。


「きたきた!」


後ろから来たバイクが猛スピードで私達を抜かしていく。


「クラウド!ちょっとスピード落としてくれる?私はタイヤを狙って撃つから・・・その隙をよろしくね」

「任せろ」


私は全体重をクラウドに任せてスコープを覗きこみ一発放った。


ドン!!!


「命中!クラウドスピード上げていいよ!後よろしくね」


私がそう言うとクラウドはスピードを上げて大剣で敵をけちらしていく。


「クラウドと名前の連携見事ッス!」

「へへ〜ありがとウェッジ」

「名前、また来るぞ!」


前の三人ももちろん応戦してくれている。

が、なかなかの敵の人数。


「まだ来るのかよ」


ビッグスが吐き捨てるように言うと、その言葉にクラウドがこう答えた。


「エリート部隊だ」

「うわ・・・嫌な響き」


ジェシーが肩をすくめる。

なかなかの人数だけど、こっちならいけるかな。


「クラウド、スピード緩めなくていいから!そのまま突っ切って!」


私は腰からハンドガンを抜き、片手でクラウドの腰を思いっきり掴んでもう片方の手でハンドガンを前を走る神羅兵目がけて撃ちこんだ。

パンパンパン!

全ての弾が神羅兵のバイクのタイヤを撃ち抜いた。


「・・・やるな、名前」

「不安だったけど大成功!」


私はクラウドの顔を覗き込んで自慢げに笑ってみせた。


「・・・」

「いや無視しないでクラウド!恥ずかしくなるから」

「いや、そういうわけじゃない」

「じゃあどういうわけ」 

「・・・飛ばすぞ」


そう言ってクラウドは更にスピードを上げた。

いやさすがに怖い!

・・・ふとトンネルの壁際に髪の毛の長い男の人の姿が見えた。

神羅兵とは明らかに違う・・・あれは誰だろ。


『ソルジャーより連絡!これより追跡を開始するとのことです!』

『了解!・・・やつが来るのか?』

『だろうな・・・ヤツが来る前に終わらせよう。巻き込まれるのはゴメンだ』


神羅兵の無線の声がここまで聞こえてきた。


「ねぇ、クラウド・・・ソルジャーって」

「さっきのやつだろうな」

「や、やっぱり・・・」


急に不安になってきた。


「ねぇさすがに怖くなってきたんだけど」

「誰に言ってる」

「クラウド」

「即答するな・・・俺が一緒にいるんだから大丈夫だ」


・・・クラウドってさらっとこういうこと言うよね。

自分でも分かるぐらいに、心臓を掴まれたのが分かった。

さっきの言葉を頭から追い出すようにハンドガンの弾をリロードする。

・・・無事トンネルを抜けてほっとしていると、「よっしゃあ!」と喜ぶビッグスとウェッジの声が聞こえた。


「このまま車庫へお願い!」


ジェシーがそう言ったから、私はハンドガンを腰にしまおうとした瞬間。


『タイムリミットだ!巻き込まれる前に撤退するぞ』


え・・・まさかソルジャー来る?


頭で考える前に後ろからものすごい大きなバイクの音が聞こえたと思うと、壁を伝ってジャンプし私達の前に着地した。

真っ赤な魚雷みたいなバイクにロン毛にリーゼントのような前髪。


「いや・・・クセ強くない?」

「ソルジャーだ」

「え!あれが?」


クラウドの言葉に驚きを隠せなかった。

やっぱりソルジャーって変な人が多いのかもしれない。

クラウドはまともな人種になるんだろうな。


「やあ!レディとドライブかい?いいねぇ・・・私も混ぜてくれよ!」


ソルジャーはクラウドに向かってそう告げた。

クラウドは完全に無視。


「つれないなぁ。ま、いいさ!じゃ、競争をしようか、競争!」

「・・・俺に言ってるのか?」

「他に誰がいる?」

「断る」

「聞こえない!聞こえないね!遅すぎて耳に届かないよ!」


ソルジャーはそう言って私達より前を走る。

確かに早すぎて的を絞れないな・・・ちょっとまずい。


「・・・なんなのこいつ」


私がそう言うとソルジャーは大声で言った。


「私はローチェ!人は私をこう呼ぶ・・・スピードジャンキーと!」

「いや・・・聞こえてるじゃん」

「レディの声は特別さ!」

「・・・」


ああ言えばこう言うタイプなんだろうなと思ったのでそれ以上何も言わなかった。


「クソ・・・」


クラウドはそう呟くと思いっきりスピードを上げたが、なかなか追いつけない。

ローチェはまた壁際を走り始めた。

と同時に目の前に雷が落ちた。


「・・・いかずちのマテリア!?クラウド、避けて!」

「分かってる」

「・・・このままじゃ近づけない」

「ずっとは続かないだろう。道に降りてきた時にスピードを上げる。横についたら俺が合図をするから聞こえたら死ぬ気で俺にしがみついてくれ」

「分かった」

「はっはっは!どうした?遅い遅い!」


ローチェは一旦道路に戻るのが見えたと同時に私達のバイクのスピードが勢いを増してローチェの横に並ぶ。


「なっ・・・」

「名前!いくぞ!」


クラウドの声が聞こえた瞬間、私は抱きつくようにしてクラウドにしがみついた。

ギュルルルル!!!

私達の乗っているバイクがスピンしクラウドの大剣も勢いをつけて回り、ローチェとバイクを攻撃する。

これは結構大ダメージなはず!

・・・だけど目が回った。

しかし変わらず横に並んで走り続けるローチェにクラウドが声をかける。


「リタイアか?」

「こんなに楽しいレース降りるわけがないだろう?・・・最後まで付き合うとも!どちらかが燃え尽きるまでね!さぁクライマックスと行こう!」

「・・・名前、ハンドルを頼む」

「了解!ってえ!?待って!?」


私の返事を待たずにクラウドは飛び上がってローチェのバイクに着地し、大剣をルーチェのバイクめがけて振り下ろし、また飛んで私の乗っているバイクに戻ってきた。

ローチェのバイクからは火が出ている。

・・・すごすぎる。次元が違うわこの人たち。


「あらら・・・ここまでか。残念。次は二人だけで勝負しよう!」


さすがのローチェも諦めたようでクラウドに声をかけている。


「さぁな」

「ハハッ・・・約束だー!!!」


大声で叫ぶローチェを私達は抜き去っていた。


「クラウド・・・さすがだね。さすが元クラス1st?だっけ?」

「そうだ。名前もなかなかよかった」

「お役に立てたようでなにより」

「また次があるなら俺の後ろで頼む」

「・・・はーい」


直々にお願いされちゃ断る理由なんてないよね。

ちょっと優越感に浸っていたらもうすぐ目的地につくようで、前のジェシー達の誘導で私達は車庫への残り少ない道のりを急いだ。

06


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