「ティファ!決起会だ!うまいもんたっぷり出してくれ」
バレットがティファに声をかけていた。
ティファが準備をしようと席を立つとバレットがクラウドの方に向いた。
「次はオレたちだけでやることにする。お前は仕事探しでもしてろ」
・・・見るからに折り合わなそうな二人だわ。
ジェシーが最初はクラウドを激推ししていたけど結局バレットは最後まで首を縦に振らなかったもんなぁ。
結局ジェシーも無関係なクラウドに頼りすぎるのは・・・と言って引き下がった。
「・・・元々、そのつもりだ。」
クラウドはバレットに視線を向けずにそう言った。
「契約がなければ、手伝う義務はない」
「そう言うと思ったぜ。ほら、残りの報酬だ。気持ち、上乗せしといてやった。・・・これで晴れて契約終了だ。さあ、悪いが席を外してくれ・・・。身内だけでやりたいんでな」
そう言ってバレットはクラウドの元から離れた。
とりあえず早く乾杯しようって雰囲気になってたから私も飲み物を持って席についた。
後でクラウドに声をかけようとしていたけど、そそくさと席を立って店を出ていってしまった。
「じゃ、みんなグラス持ったか?かんぱーい!」
私は慌ててグラスを持った。
「「「かんぱーい!!!」」」
みんな好きに飲んで食べて酔っぱらって騒いでいる。
私もなかなかに飲みすぎたけど、顎が痛いぐらい笑った。
「じゃあそろそろお開きにすっか。みんな明日はよろしく頼んだぜ!」
バレットが高らかに声を上げる。
私を必要としてくれてるなら、頑張らなくっちゃ。
店を出て天望荘までの道のりを酔いを醒ますために少し遠回りして帰る。
そういえばクラウドどうしたんだろ。
さすがに決起会とはいえ除け者にしすぎちゃったよね。
声かけとこうかなと思ったけどもう夜も遅いし部屋に行くのは違うなと思ってやめておいた。
コンコン
部屋について明日の荷物をまとめようとしたら、ドアをノックする音が聞こえた。
・・・誰?
「はーい、どなたで・・・」
「名前!」
「え、ジェシー!?どうしたの、何か言い忘れたことでもあった?」
「ちがーう!あと私だけじゃなくて、クラウドも一緒だよん」
「ますます何かあったのか気になるんだけど・・・」
「まぁまぁとにかく大事な話!名前、ちょっと部屋入れてもらっていい?」
「いいよ、どうぞ」
ジェシーとクラウドが私のお部屋を訪問するという訳の分からない展開にひとまず説明を待っていたらジェシーが話を始めた。
「じゃ、前置きはナシで」
ジェシーは赤のマテリアをクラウドに見せた。
それを見たクラウドは怪訝そうな目で口を開く。
「今度は何の礼だ?」
「次の作戦に推せなかったお詫び」
クラウドがマテリアに手を伸ばすとジェシーはマテリアを持った手を上にひょいと上げた。
「じゃないとしたら、な〜んだ?」
「・・・取引か」
「いい感してる。でもこれ、ここにいるメンバー以外には内緒にしてよね。名前もね」
二人の会話を聞いていて急に話しかけられたもんだからびっくりしたけど首を縦に振った。
「今夜のうちに解決しておきたい個人的な問題なの」
「今夜?」
「そう。私と一緒にクラウドと名前に七番街・・・プレートの七番街まで行ってほしいんだ・・・目的は道々話すから」
「俺は・・・構わないが・・・アンタも名前も明日は大仕事だろ?」
「えっと・・・クラウドは分かるんだけど私も一緒に?」
「後ろから援護してくれる名前の力がどうしても必要で、お願いしたいんだ」
うっ・・・そう言われると断れない。
「あと、今やらないともっと大変なことになるから」
ジェシーは少し下を向いてそう呟く。
「・・・クラウド、名前、話は決まったってことでいい?」
「ああ」
「うん、分かった」
私達がYESの返事をするとジェシーは持っていたマテリアをクラウドにひょいと投げた。
「手付金代わりね。名前は同じアバランチの仲間ってことで・・・何もなくてごめんね」
「そんなのいらないって!・・・じゃあたまにはセブンスヘブン以外で二人で飲んでみたいな、その時にお酒奢ってよ」
「りょーかいっ!お安い御用!・・・今夜の作戦だけど私の計算だと出発したら朝まで戻れない。準備は今のうちにしっかりね。終わったら私に声かけて」
クラウドは自分の部屋に戻った。
私はスナイパーライフルを背中に背負い、ハンドガンを腰に差した。
息をふうっとひとつ吐く。
本番は明日だけど久々の実戦的な作戦だ・・・気合い入れていかないと。
マテリアを調整して荷物もまとめた。
扉を開けたら準備を終えたクラウドと、ジェシーの姿があった。
「二人とも、準備はオッケー?」
「ああ」「うん」
「じゃあ時間になったら駅に集合!二人とも頼りにしてるんだから」
待ち合わせ時間、駅についたらクラウドがいた。
「あ、クラウド」
「名前・・・明日の作戦もあるのに本当に大丈夫なのか?断ってもよかったんじゃないのか?」
「いやぁ、ジェシーにあぁ言われちゃうと、ね」
「頼られると断れないところは名前らしいな」
「それ褒められてるのか微妙なとこだよね」
「微妙なとこだな」
「ちょっと!」
クラウドは肩を揺らして笑ってる。
すると、ジェシーの姿が見えた。
「二人とも、おまたせ!準備はいい?」
「うん、バッチリだよ」
「鉄道、今夜はもうないぞ!奴ら終電を早めたんだ」
ビッグスとウェッジがバイクを持ってこちらに歩いて来た。
続けてビッグスが話を続ける。
「と言うわけでバイクを借りてきたからこれで上行こうぜ」
ジェシーはまさか二人が来るとは思ってなかった様子だ。
「どうして分かったの!?」
「ジェシー様子が変だったッスよ!何か俺達と話してても心ここにあらずというか」
「かと思えばやたらとハイだったりよ」
「それにしたってどうして上へ行くって分かるの?・・・なに、私起きたまま寝言言った?」
「両親の顔見ておきたいだろうなって思ったッス」
「図星だろ」
ビッグスはそう言って親指をビッとジェシーの方へ向ける。
流石三人の絆は深い。
「イテテテ・・・」
ジェシーは痛がる素振りを見せた。
「で、ホント図々しいと思うんだけど、親のいない俺達にも親孝行気分のお裾分けをだな」
「それ、いいね。私もお裾分けしてほしいな」
私は親をニブルヘイムの悲劇で失っている。
ジェシーのお母さんに会うのもすごく久しぶりだし、久々に顔見せにいきたいな。
「う〜ん・・・クラウド、親は?」
クラウドも私と同じ。
「いない」
ビッグスとウェッジは優しそうな笑顔でうんうんと頷いた。
「じゃ、みんなで行くか〜!親不孝の痛みを分けあおう!」
ジェシーは諦めたように、でも嬉しそうに声を上げた。
「で・・・わりぃがバイクは二台なもんで、どうする?」
「ごめんねビッグス、私までいると思わなかったでしょ」
「いや名前の腕前考えたらいてくれたら百人力だぜ?勘違いしないでくれよ!・・・しゃーない、俺とウェッジとジェシーで三人で一台だな」
と、いうことは私とクラウドが一緒に乗るわけですかビッグスさん。
ジェシーは不満そうに声を上げた。
「えーっ!クラウドの後ろ乗りたいー!」
「ワガママ言うな〜?ソルジャーとは言え慣れてないクラウドと銃で援護できる名前が一緒の方がいいだろ?これも作戦成功のためだ!クラウド、バイクの運転できるか?」
「あぁ、問題ない」
「二人でドライブの夢が〜!」
「目的を忘れるなよ!ほら乗った乗った」
「名前いいなー!いいなー!」
・・・変われるものなら変わりたいよジェシー。
クラウドがバイクに乗り、私がその後ろに乗った。
「名前、バイクで後ろ乗ったことはあるのか?」
「うーん、何回かあるけど久しぶり」
「じゃあ問題ないと思うが、しっかり掴まっておけよ」
「言われなくても!」
私はそう行ってバイクのイスの後ろ部分をしっかりと持った。
「そんなとこ持ってるだけだと振り落とされるぞ」
「いやクラウドどこまでスピード出すつもり?」
「さあな、ほらこっちだ」
クラウドは私の手をとって自分の腰に巻き付けさせた。
「えっ」
「離すなよ」
「は、はい」
なぜか敬語になってしまった私。
視線を感じて振り向くとビッグスとウェッジとジェシーが私達を見てニヤニヤしていた。
「いやぁ〜クラウドはティファかと思ってたけど、これもなかなかありじゃない?まぁ私諦めてないけどね!」
「姉さん女房イイッスね〜」
「くぅ〜彼女欲しいぜ・・・」
・・・クソガキ達め。
「名前、どうしたんだ」
クラウドが私に訪ねてきたので私は慌てて前を向いた。
「な!んでもない!」
「みんな!新しいIDは持ったね?」
ジェシーが声を上げるとビッグスとウェッジが声を揃えて返事をする。
「へい、あねご!」
「行くぜ、野郎ども!」
「おー!」と声を上げようとしたらバイクが急発進してびっくりして喉まで出かけた声が止まる。
昔とは違うクラウドの背中に戸惑いながら、なかなかのスピードで走るバイクに本気で振り落とされないように恥ずかしさも忘れてしっかりとクラウドにしがみついた。