クラウドと特に会話も交わさないまま店に戻ると、バレットがいた。


「おう名前、帰ってきたか。次の作戦、明日決行になったぜ。下に全員集合する。名前はここでジェシーを待っててくんねぇか?用事があるって言ってたからもう少しかかるはずだ」

「え、明日!?いきなりだね・・・今回は、私も?」

「そうだ。今回は大きい作戦だからな。名前がいてくれねぇと」

「わかったよ。ジェシーが来たら一緒に下に降りるね」


背を向けたバレットにクラウドが声をかける。


「会議の前に報酬をもらいたい」

「取り込み中だ!会議が終わるまでだまって待ってろ」


そう言い捨ててバレットは下に降りて行った。


「クラウド、ごめんね・・・お詫びにと言ってはなんだけど、お酒飲める?」

「・・・あぁ」

「じゃあ、そこに座ってて」


私はグラスを手に取り氷を入れて最近人気でよく出るウイスキーを注いでクラウドに渡した。


「はい、どうぞ」


クラウドはウイスキーを飲み始めた。

私も同じウイスキーを入れて一口飲んだ。

美味しい。


「クラウド、どう?」

「初めて飲んだけど、美味いな。それより・・・名前も飲むのか」

「飲んじゃダメ?私ウイスキー好きなの」

「名前も変わったな、ウイスキーを好んで飲むようになるなんて」

「もうだいぶ大人ですから。クラウドよりも全然ね」

「いつも名前はそうだよな、俺を子ども扱いする」

「私は子どものクラウドしか知らないもん」

「それもそうだな」


クラウドはそう言ってフッと笑った。

あ、笑った。かわいい。珍しいな。

ふとクラウドのグラスに目を落とす。

もう半分なくなってるけど・・・ペース早くない?


「名前は・・・」

「あ、はい。何?」

「作戦に乗り気じゃないのか?」

「・・・何でそう思うの?」

「さっきのバレットとのやりとりを見てそう思っただけだ」

「・・・クラウド、結構私のこと分かってくれてる?」

「そりゃバレットよりはな、長い付き合いだしそれぐらいのことは分かる」

「乗り気じゃないというか、私が行っていいのかなって思っただけ」

「名前の力が必要って言ってたが」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そんなに私力になれてないと思うんだよね。次の作戦の時に色々考えようと思ったけど、ああ言われちゃ断れないんだよなぁ」

「名前は昔から自分を卑下する癖がある。さっき一緒に組んだ時、とても戦いやすかった」


私も、そう思う。

久々に銃を構えてて楽しいって思ってしまったくらいには。

クラウドが強いから気楽に臨めるっていうのもあると思うんだけど。

自分を認めてくれたみたいで嬉しくなった。


「・・・そう思ってくれてるなら嬉しい。クラウド、もしかして酔ってる?」

「酔ってない、これくらいで」

「耳赤いけど」


私がそう言うとクラウドが耳をさっと隠す。


「嘘、冗談。赤くないよ」

「おい、からかうなよ」


そう言ってクラウドはバツが悪そうに下を向く。


「・・・かわいい」


抑えきれず心の声が漏れてしまった。


「かっ・・・嬉しくない」

「クラウドくんは、かわいいね〜」


そう言ってクラウドのツンツン頭をポンポンと叩いた。


「だから子ども扱いしないでくれ」

「ふふっごめんね」


クラウドとこんなに自然に話ができることが嬉しかった。

最初の気まずさはどこへやら。

やはりお酒の力っていうのは素晴らしい。

こういうお姉ちゃんと弟みたいな関係も悪くないよね。


「そういえば、クラウド、このお花」


私は花瓶の刺さった花を指差した。


「ティファのためにわざわざ買ってきたの?やるじゃん」

「いや、買ったというか・・・まあ偶然機会があったから貰っただけだ」

「ティファのこと、どう思ってるの?」

「どう、って。同じ村出身の幼馴染・・・」

「それじゃ私と変わらないじゃん。特別な意味でってことだよ」

「特別な意味?」

「いやいくらなんでも鈍すぎるよクラウド・・・恋愛感情はあるかって聞いてるの」

「そういうのは良く分からない」

「・・・じゃあ大切?守りたいって思う?」

「それは、思ってるかもしれない。今度こそは俺が・・・」

「じゃあ、そういうことでしょ」


私はパンッと両手を叩いた。


「それはもう恋だって、恋」

「いや、そういうのじゃ」

「人生の先輩が言ってるんだから、信じてほしいんだけど」

「・・・名前は経験豊富なのか?」


飲んでいたウイスキーを吹き出しそうになってしまった。

経験豊富って・・・他に言葉なかったのクラウド。

クラウドのグラスは空になってるし、いよいよ酔ったかな。


「別にそういうわけじゃないけど、第三者から言われた方が自覚するっていうのはよくある話」

「そんなものか」

「そんなものです」

「なんか余計なことばかり話してしまった気がするな・・・これも名前のせいだな」

「名前のおかげ、でしょ」


そう私が言うとクラウドはまた笑った。

ダメだ、この笑顔に弱いかもしれない。


「名前ー!お待たせー!」


ジェシーが勢いよく店に入ってきた。


「ジェシー。お疲れ様。バレット待ってるから下に行こ?」

「了解!あれ、クラウド・・・酔ってるでしょ!」

「・・・そんなことない」

「嘘!顔赤いもの!名前〜、きついの飲ませて何しようと思ったの〜?」

「うーん、とって食べる気はなかったんだけどクラウドにはまだ早かったみたい」

「おい名前」

「ごめんって、じゃあ行ってくるねクラウド。ゆっくりしてて」

「あ、次の作戦、このジェシーちゃんがクラウドのこと推しとくかんねー!クラウドみたいな有能な人材は必要!」


「・・・ああ」


クラウドはティファが好きかもってこれで嫌でも自覚したでしょ。

これでいい。

私は決まった相手がいる人には手を出さない。

私はもう自分で傷つきにいくような気持ちは持たないって決めているから。

勝手に自己完結をして自衛をする方がマシ。

さっきクラウドの笑顔にトキめいたのはなし、なし。

心の中でブツブツ呟きながらジェシーと二人で地下に降りて行った。

04


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