武器屋に足を踏み入れるとクラウドとティファの姿が見えて、同時におじちゃんの声がした。
「強えやつが使えば、うちの宣伝になる!よろしくな!」
「おじちゃん?武器の手入れお願いしたいんだけど・・・」
「おっ名前ちゃん!久しぶり!任せときな」
私はスナイパーライフルとハンドガンをおじちゃんに渡す。
「名前ちゃん、あんま使ってねぇな?武器が泣いてるぜ〜」
「う〜ん、あんまり機会がなくてさ」
クラウドは私の武器を見て少し目を見開いて口を開いた。
「名前、割と物騒な武器使ってるんだな、驚いた」
「やっつけた時の感触が残りにくいでしょ?だから銃にしたの。見た目は物騒だけどね」
「・・・なるほど、名前らしい理由だな、納得した」
「名前のスナイパーの精度すごいんだから!」
ティファが自慢げに言う。
「照れるな・・・そういえばどうしたの?クラウド、武器屋のおじちゃんと意気投合でもしたの?」
「クラウドが自警団の仕事を手伝ってガレキ通りのモンスターを退治したの。それでおじちゃんも認めてくれたみたい」
「・・・なるほど」
あれぐらいのモンスターならクラウドは朝飯前って感じなのかな、流石。
「クラウドには今いい評判、いいご縁が必要だからね。なんでも屋として働いてもらうの。だから名前もできることがあれば手伝ってあげて」
「分かったよ、何かあれば言ってねクラウド」
「あぁ、助かるよ、名前」
「名前ちゃん!武器の手入れ終わったぞ!」
「え?もう?」
「あんま使ってないから簡単に動作確認と汚れのふき取りだけしておいたよ」
「そっか、おじちゃんありがとう。ティファ達はまだなんでも屋?のお仕事続けるの?」
「うん、そうなるかな。名前、店に戻るなら悪いんだけど店の前の掃除しといてくれないかな?」
「了解。戻ってくるの待ってるね」
そう言って私は店に戻ることにした。
なんでも屋、かあ・・・クラウドは無愛想だけど横にティファがいれば問題ないよね。
クラウドはしばらくここにいるつもりなのかもしれないな。
考え事しながら店に戻ると手入れしてもらったスナイパーライフルを持ってスコープを覗いてみた。
・・・こうするのも久しぶりだな。
銃を置いて、代わりにホウキとちりとりを持って店の前を掃除をしようと扉を開ける。
結構尖った石が落ちてる、危ない危ない。
あれ、何か人だかりができてる。なんだろ?
「よせ!来んな!」
え?ジョニー?
「待て!大人しくしろ!」
なぜかジョニーが神羅兵に取り押さえられてる・・・何したの本当・・・。
「離しやがれ!神羅の犬コロ!」
「黙れ!地ネズミ!」
「チューチュー!チューチュー!」
馬鹿でしょ、と呆れていると、人ごみの中にクラウドとティファの姿を見つけたので声をかける。
「ティファ、この騒ぎ、一体どうしたの?」
「神羅の倉庫から火薬を盗んだ人がいるんだって・・・ジョニーが職務質問されたらしくて・・・私達の魔晄炉爆発の絡みもあるし、ジョニーは私達がアバランチだってこと薄々気づいていて口も軽いし、ジョニーを助けなきゃいけないんだけど・・・私、どうしても開店までに済ませなくちゃいけない店の用事があって・・・どうしよう」
「俺一人で大丈夫だ」
「道に迷われても困るし、一人で任せるのも不安で・・・そうだ名前、一緒に行ってあげてくれない?」
「え、私?!足手まといにならないか不安なんだけど」
「名前なら大丈夫、二人いたほうが安心でしょ」
「うーん、分かったよ。じゃあクラウド、行こ。ティファお店よろしくね」
「うん、二人とも気をつけてね」
クラウドとジョニーを追いかけるためにゴミ山に向かう。
「クラウド、こういうのに首突っ込みたがらなさそうなのに手伝ってくれるんだね、ありがとう」
「今日は世話になったからな、礼だ」
「ふふ、やっぱクラウド優しいところあるよね」
「・・・別に、普通だ」
呑気に話していると扉の向こうからジョニーの痛いという叫び声が聞こえてきた。
「クラウド、あそこに隠れよう」
物陰に身を潜めていると神羅兵の声が聞こえてきた。
「火薬を盗んでおいてよく言うな・・・倉庫の入場記録にお前のIDが刻まれてるんだ!」
「おい!何かの間違いだ!神羅の倉庫なんて近づいてもいない!・・・まさかジェシー?あのポニーテールが・・・」
ジェシーはアバランチの一員でIDの偽造なんてお手の物だよね・・・。
いやでもジョニーには悪いけどジョニーのIDなんて偽造価値ある?
「IDはひっかけだ!お前のIDで神羅の施設に入れるわけないだろ!」
・・・ですよね。
でもジェシーの名前が出てきてしまったし、早くしないとジョニーの口がすべってしまう。
「クラウド、そろそろやばいかも・・・行かなきゃ」
「ああ」
「クラウドは兵士の気をひいて。私は後ろで隠れながら何とかする」
「分かった」
そう言ってクラウドが走り、ジョニーと神羅兵の前に立って話し始めた。
「そいつを離せ」
ジョニーに向いていた神羅兵がクラウドにゆっくり向きを変える。
「なんだ?お前は?仲間か?」
ジョニーが落ち着きをなくした様子で目隠しされたまま辺りを見回す。
「なんだ?誰かいるのか?・・・ああ!助けに来てくれたんだな!なぁ、あんたら。アバラ・・・」
そういうと同時に私はジョニーにスナイパーライフルを放った。
コーン!!!
ジョニーのおでこに直撃してジョニーは気を失った。
こういう時のために実弾じゃない弾も持っておいてよかった・・・。
まぁ気を失うレベルでは痛いけどね。
「なんだ、まだ仲間がいるのか!?貴様ら、どういうつもりだ!?」
「・・・やるしかないか」
私は一人でそう呟いた。
クラウドが大剣を振り回し、私がサポートとしてスナイパーライフルを撃つ。
この感じ、久々だな。
近距離型のクラウドと組むとやりやすい。
そう思っているうちに全員その場に倒れ込んだ。
クラウドにかけよって、声をかける。
「今のうちにジョニーをどこかに運ぼう?」
「分かった」
「どこだ?いるなら助けてくれー!」
いつの間にか目を覚ましてジョニーが叫んでいる。早くしないと。
クラウドがゆっくりとジョニーに近づき、大剣を握る。
「え、クラウド・・・何するの?」
「口を封じる」
「やめてくれー!」
「ちょ、ちょっと待って!そこまでしなくていいってば!」
思わずクラウドの腕を掴んで必死に止める。
クラウドは小さく溜息をついて、ジョニーの前にしゃがみこむ。
「死にたくなかったら、街を出ろ」
ジョニーはその声に、ただひたすら小さく頷き、叫びながら走って逃げて行った。
「世界の果てに消え去りますー!」
ジョニー・・・ご愁傷さま。
ジョニーの姿が見えなくなると、クラウドは私の方を向き口を開いた。
「本当に行かせていいのか?・・・遊びじゃないんだろ」
「遊びでは、ないよ。でももういい」
「・・・神羅兵達は?」
「もういいよ、このまま置いていこ」
私がそう言ってもクラウドの目はまだ戦いの時の鋭さを持ったまま。
その目が私に向けられる。・・・怖い。
「早く行かないと、ほらクラウド」
「・・・わかった」
そう言いながら私達は来た道を戻る。
歩きながら、クラウドの顔を横目で見た。
やっぱり、綺麗な目・・・。
けど、これが神羅にいた元ソルジャーの証、魔晄の目なんだよね。
クラウドは優しい、優しいけど・・・。
さっきはクラウドのことが怖い、と思った。
店に戻るまで私はクラウドに声をかけることができなかった。