クラウドの視線の先には神羅のヘリコプターが上空を飛んでいる光景。
ヘリからは神羅兵と、レノと一緒の格好はしているがスキンヘッドにサングラスをしている男が降りてきた。
「タークスだ」
「働き者だね」
「よほど大事な用らしい」
「私?クラウドと名前?」
「どっちにしても見つかると面倒だ」
「じゃあ裏道、行こうか。モンスターいるけど・・・」
「神羅よりはマシだ」
「うん、行こう」
私の言葉を最後にエアリスの案内で裏道へと進む。
モンスターは比較的弱いものばかりで、無事何事もなく抜けることができた。
目の前に伍番街スラムの街並みが広がる。
歩いていると、街中にあるビジョンが目に留まった。
『私は今、伍番魔晄炉の内部に来ております!ご覧になれますでしょうか。まだ煙が上がっております。あれは崩落した鉄骨でしょうか・・・既に火災は消し止められているようです』
思わず目を反らしそうになってしまうが、モニターをしっかりと見る。
これは・・・私達がやったことなんだ。
『あの・・・兵器開発部門統括のスカーレットさんですよね!お話伺ってもよろしいでしょうか?』
『邪魔』
スカーレットと呼ばれる金髪に赤いドレスの派手な女性は質問するレポーターを押しのけて進んで行く。
しかしレポーターは負けじとスカーレットに食らいつく。
『伍番魔晄炉にて発生しました爆発について現時点で判明していることを、お教えいただけないでしょうか?』
『・・・現在、伍番魔晄炉は運転を停止し既に火災も消し止められております。以降、被害が拡大する心配はございませんので市街地の皆様はご安心ください。原因につきましては鋭意調査中ではありますが壱番魔晄炉で使用された爆弾と同じものと考えて間違いないでしょう。こちらは壱番魔晄炉で撮影された映像です』
画面が切り替わり、私達が伍番魔晄炉で見せられたジェシー達の映像が映し出される。
『犯行グループはアバランチを名乗っており現在もミッドガルに潜伏していると思われます』
『しかし、これだけ短期間に連続して犯行が行われているわけですが神羅カンパニーは大丈夫なのでしょうか?』
『どういう意味かしら』
『いえ・・・その』
レポーターの言葉がスカーレットの逆鱗に触れたのか、カメラマンを蹴飛ばし、映像はスカーレットを下から見上げた映像へと変わった。
『ご心配なく。こんなことで神羅は揺らぎませんので』
『さっさとカメラを止めろ!』
最後は神羅兵の警告で映像は終わった。
「名前、クラウド・・・行こ?」
映像を食い入るように見つめていた私とクラウドにエアリスが声を掛けた。
「あ・・・エアリスごめんね、行こう」
「エアリス!」
自分の上からエアリスを呼ぶ幼い声が聞こえた。
「また、そんなとこ登ってる!」
「魔晄炉が見えるかと思って・・・その人達、誰」
男の子は私とクラウドを見て少し警戒したのか、エアリスに尋ねた。
「この人は、なんでも屋のクラウドと助手の名前!今は私のボディーガードなんだ。二人とも、この子はムギって言うの」
「ムギくん、よろしくね」
私はムギくんに微笑む。
クラウドは何も言わない。
子ども、得意そうには見えないもんね。
「うん・・・じゃあ、またね」
そう言ってムギくんは去って行った。
「あっエアリス!」
お次は数人の子ども達がエアリスを取り囲んだ。
「みんな、ここで何してるの?」
「魔晄炉を見てきた帰り!」
「そういえば先生がエアリスを探してたよ」
「え、なんだろ・・・」
「リーフハウスに寄って欲しいって!」
「じゃあ一緒に行こっか。・・・クラウド、名前、リーフハウスってね、身寄りのない子達を引き取って育ててるとこなの」
「素敵だね・・・そういう場所があるのは。エアリス、街の人達に慕われてるんだなって思った。良い街だね」
「名前にそう言ってもらえると嬉しいな・・・ここがリーフハウス」
前を嬉しそうに歩く子ども達についていくうちにリーフハウスに着いた。
緑に囲まれている、素敵な建物。
「ごめんね、エアリス・・・寄ってもらって」
先生かと思われる女性がエアリスに申し訳なさそうに笑いかける。
「ううん、帰り道だから」
「あのね、お花をお願いしたいんだけど・・・」
「任せて、どれぐらい?」
「多めにお願い。・・・ほら、なんだか暗いニュースが続いてるから、みんなで飾って明るくしようと思って」
心臓がドキリとした。
「素敵、楽しみだね!」
エアリスは当然私の心境を知るよしもなく先生の提案にとても喜んでいた。
任せてね、と告げて歩き始める。
「名前は女の子だしお花好きだと思うけどクラウドはお花好き?」
エアリスは前を向いて歩き続けたままクラウドに問いかける。
「考えたことがない」
「ふ〜ん、花屋にそれ、言うかな」
「嘘はつけない」
「この前あげたお花はどうしたの?」
・・・きっと、クラウドがティファにあげた花のことだ。
「あれは・・・」
「誰かにあげた?」
「そうだな」
「えっ!誰に誰に?もしかして名前だったりして!」
「いや・・・」
「あはは、私はもらってないよ、エアリス」
私じゃなくてティファっていうかわいい幼馴染にあげたんだよ、とは言えなかった。
すごい、虚しくなる気がしたから。
「この話はもういいだろ」
「ま、いいけど・・・この道を抜けたら私の家。着いたら、お母さん紹介するね」
この話はここまでらしい。
少し、ほっとした。
「エアリスのお母さんに会わせてくれるの?・・・楽しみ」
「ふふっ。歳の近い女の子のお友達紹介できるの嬉しいなぁ」
エアリスの言葉に嬉しくなって笑みを浮かべていると、花畑が見えた。
・・・すごい、綺麗。
「あれが私の家!」
「すごいな」
花に興味がなさそうなクラウドも思わず声を上げるほど素敵だった。
スラムにもこんな素敵な所があるんだな・・・。
「ただいま」
エアリスが扉を開けると、洗い物をしているお母さんであろう姿が目に入った。
「おかえり。少し前にルードが来たけど、一体・・・」
振り返ったエアリスのお母さんは私達の姿を見て驚く。
「はじめまして!お邪魔します。名前といいます」
「私のお母さん、エルミナ。こちら、クラウドと名前。私のボディーガードなの。名前はどちらかというと、お友達」
クラウドはエルミナさんに軽く会釈をした。
「世話になったね」
「・・・仕事だ」
「クラウド、固いよ」
思わずクラウドに突っ込む。
「これで、完了だな」
「うん、ありがとう」
これでエアリスとお別れか・・・せっかく仲良くなれたので単純に寂しい気持ちになる。
「名前とクラウドは七番街行くんだよね」
「あぁ」
「じゃあ、送ってく」
「ここまで送った意味がない。またタークスが来たらどうする」
「面倒だけど慣れてるから・・・お母さん、私二人を七番街まで送っていくから」
「嬉しいけど・・・危ないし悪いよエアリス」
私の言葉にエアリスはウインクをした。
まだ一緒に過ごせるのは嬉しいけど、危ない目に合わせる訳には・・・。
「そうかい?でも明日にしたらどうだい?今から行って帰ってじゃ遅くなる。今日はもうゆっくりして朝早くに出な。そしたら昼には着くだろう?」
「だね。二人とも、いいよね」
「でもそれって・・・家に泊まらせていただくってことでは・・・」
「うん、そうなるね」
私が恐る恐る聞くとエアリスはけろっとして答えた。
「名前は悪いと思ってると思うけど、名前だって女の子なんだから危ないよ」
「う、うう・・・」
「クラウド、いいよね?名前が危ないもんね?」
「・・・分かった」
クラウドの意外な返事にびっくりしつつもエアリスに勝てそうになかったのでお言葉に甘えることになった。
夕食まで少し時間があるから、とのことでさっきリーフハウスに頼まれたお花を三人で届けに行くことになった。
渋々手伝うクラウドと楽しそうなエアリスと私。
不思議な光景だなと思ったけど、つかの間の平和を楽しみたい。そう思った。