色とりどりのお花をカゴに入れてリーフハウスへと向かう。


「俺はここで待つ」

「でも退屈でしょ?二人で街見てきたら?」


リーフハウスの扉の前に立ち止まった私とクラウドにエアリスが告げる。


「エアリス一人に任せちゃって大丈夫なの?」

「もちろん!せっかくだから街の様子見てきて、ね?」

「じゃあお言葉に甘えて・・・ぶらぶらしたらまた戻ってくるね」

「うん、いってらっしゃい!」


エアリスがパタンと扉を閉めた。


「クラウド、どうする?」

「足りない持ち物があれば調達しに行くか」

「あ、いいね。私も色々書い足しておきたい」


アイテム屋や武器屋などで色々と買い足した後、少し疲れたのでカフェのようなお店で休憩することにした。


「二人なんですけど・・・席座ってもいいですか?」

「あぁ、いらっしゃいませ!・・・ってエアリスと居た子達か?」


店長らしきおじさんは私達を見て、そう言いつつ案内してくれた。


「あ、はい!そうです。エアリスは良く来るんですか?」

「あの子は良く店の手伝いしてくれるんだよ。エアリスとも仲良くしてやってくれな。ゆくりしていってくれ」

「ありがとうございます。あ、じゃあ注文いいですか?私アイスティーで。クラウドは?」

「・・・アイスコーヒー」

「じゃ、それでお願いしますおじさん」

「かしこまりましたっ!」


馴染みのない街で買い物するのは楽しかったけど、少し気疲れした。

クラウドとこんな店でお茶するとは思ってなかったし何か最近本当に色んなことがある。


「・・・疲れたのか?」


少し息を吐いた私を見てクラウドが私に聞く。


「少し疲れたけど、それよりなんか楽しいし平和だなって。こんなにゆっくりしてていいのかなと思う気持ちもあるんだけどね」

「そうだな。明日急いで七番街に戻ろう」

「クラウドも楽しい?」

「え」

「いや何か私ばっかり楽しんでてあれかなって思っただけ」

「こういうのもたまにはいいな」


クラウドはそう言いながら腕を組んで街を見渡した。

悪くないとは思ってくれているみたいで少し安心した。


「はい、アイスティーとアイスコーヒーお待ち!」

「ありがとうございます」


アイスコーヒーをストローで一口含んでクラウドを見た。

相変わらず街を見渡している。

なんかこれって普通にデートしてるみたい。

そう考えると少し顔が熱くなってきたので、さっきより勢いよくストローを吸った。

上手く話題を出せないでいるとクラウドがようやくアイスコーヒーに手を伸ばして一口飲んだ後、口を開いた。


「顔についてた傷は大丈夫か?」

「え、あ、うん。これぐらいなら傷跡残らずに直ると思う。まぁこれぐらいなら残っちゃってもあんま目立たないけど」

「女なんだから顔に傷は残らない方がいい」

「これぐらいなら目立たないよ」


私はそう返しながらクラウドが私のこと少しでも女として扱ってくれるということが嬉しかった。

クラウドといると年甲斐もなくウブな乙女になってしまうみたいで気持ち悪いけど。

子どもの頃から何も成長してないと感じて恥ずかしくなる。


「あっ!」


聞こえた幼い声にそちらの方を向く。


「あ、ムギくん。どうしたの?」


ムギくんが私達を見て少しほっとした表情を浮かべた。


「エアリスは?」

「リーフハウスの方に行ったと思うけど何かあったの?」

「うん・・・ちょっと困ってるんだ」

「じゃあ私達もそろそろ時間だと思うし一緒に行くよ。おじさん!ご馳走様でした。代金ここに置いておくね」

「おう!また来てくれ!」


机にギルを置いてクラウドと一緒にリーフハウスへと向かう。


「エアリス!」


エアリスを見つけたムギくんはエアリスへと声を掛けて状況を説明し始める。


「遊び場に黒い服の人が入ってきて怖がった子達が外に出ちゃったんだ」

「黒い服・・・スーツは着ていたか?」

「スーツじゃなくてボロボロのマントを着ていつも街の中をフラフラ歩いてる人。病気なんだって・・・後、腕に数字が書いてあるんだ」


ムギくんのその言葉に私とクラウドは目を合わせる。

思っていることはおそらく同じ。

マルカートさんと特徴が一致する。


「心配だから・・・私行くね」

「俺達も行こう。俺も名前も似た男を知っている」


不安そうにするエアリスにクラウドが告げた。


「こっち!」


ムギくんが案内している方向についていく。

マルカートさんは誰かに害を及ぼすような人ではない、と思うんだけど・・・。

同じ病気だけどまったく別の人なんだろうか。


「急いで!」


ムギくんが狭い路地に入って行く。

大人は壁を伝ってゆっくり通らないと進めないような道。


「ムギ!」

「エアリスを連れてきた!」


遊び場につくとムギくんのお友達が待ち構えていた。


「もう大丈夫。私達に任せて!」


エアリスが子ども達を安心させるように宥める。


「でもモンスターが出るんだ・・・」

「安心して。この人達すっごく強いんだから!」

「元ソルジャーだ」

「その助手?です」


エアリスが子ども達を安心させようと私達を紹介する。

自分で言っておきながら元ソルジャーの助手って何だろうと思ったけど子ども達は気にしていない様子。


「黒服の男は?」

「分かんない・・・いつの間にか消えちゃって」

「今は子ども達が優先だよ」


エアリスの言葉にうんうんと私は頷いてモンスターが出るという道に出た。


「みんなどこかな」

「子どもの行動は予想できないからな。探し回るしかない」

「そんなに時間も経ってないはずだし大丈夫だよエアリス。急ごう」


奥へ奥へとひたすら進んでいく。


「あ!あそこ!」


エアリスの指す方向を見ると子どもたちが見えた。

少し距離はあるけどモンスター達がいる。


「刺激しない方がいい」


狭い道を進みながらモンスターの元へと辿り着いた。


「エアリス!」


子ども達がエアリスの姿を見つけ声をあげる。

私達の気配に気づいたモンスター達が私達に襲い掛かってくる。

三人で協力し、最後のガラクタを集めたようなモンスターが倒れ爆発した瞬間、エアリスが子ども達の元へと駆け寄った。


「今、行くね!」


子ども達は川にあるガレキに取り残されている。

エアリスが木の足場に立つと足場が崩れ落ちる。


「エアリス!」


私は急いでエアリスの手をとった。


「あちこち崩れやすくなってるの!」

「きっと魔晄炉が爆発したせいだよ」


子ども達の言葉に心の中でごめんね、と告げる。

するとクラウドは私達の前に立った。


「俺が行く」


クラウドはそう言うと地面を蹴って飛び上がりガレキの上に着地すると子ども二人を抱いたまま、またこちらまで戻ってきた。


「ありがとう!」

「かっこいい・・・」


子ども達はキラキラした目でクラウドを見ている。

そしてそんな眼差しを受けてどうしたらいいか分からない状態のクラウド。

・・・微笑ましすぎる。

子どもが苦手でどう接したら分からないだけで、やっぱり嫌いってわけじゃないんだよね。


「じゃあ戻ろっか」


エアリスもその光景を見て笑った。


「きゃあ!」

「わぁ!」


まだモンスターが残っていたようで、見つけた子ども達が悲鳴を上げる。

私とエアリスで子ども達を守りクラウドが一人で戦ってくれた。


「すげ〜!」

「どうしてそんなに強いの?」


クラウドの戦いっぷりを見た子ども達がクラウドへ駆け寄った。


「クラウドは元ソルジャーなんだよ」


エアリスは子ども達に人差し指を立てながら言う。


「本当に?」

「戦争に行ったの?」

「・・・秘密だ」

「俺もソルジャーになろうかな〜!」

「そんな簡単になれるわけないでしょ。ね、クラウド!」

「そんなことないよな、クラウド!」

「すっかり人気者だね」


子どもに懐かれたクラウド。

エアリスがそう言うとクラウドは何も言わなかったけど顔は少し笑っていた。

素直じゃないんだからなぁ本当に。

その後はモンスターが出ることもなく無事、子ども達の遊び場に戻ることができた。


「ありがとう」


ムギくんが私達全員の顔を見てお礼をしてくれた。

エアリスがムギくんと一緒の目線までしゃがみ、頭を撫でる。


「今度何かあったら、すぐ大人を呼ぶこと」

「うん、そうする。エアリスとクラウドと名前は大人だけど、もう仲間だから、いつでも遊びに来てよ」


ムギくんに逆にありがとうを伝えて、遊び場から出て行こうとすると、後ろから聞こえる呻き声。


「うぁ・・・あ・・・」

「きゃー!」

「うわぁ!」

「黒マントの・・・!」

「大丈夫、大丈夫だから!」


私とエアリスは子ども達を守りクラウドは大剣に手をかけた。


「うぅ・・・」


黒マントの男は呻き声をあげながら前に倒れた。


「っ待て!」


クラウドの制止を振りきしエアリスは黒マントの男に駆け寄る。

クラウドと私も慌てて後を追った。


「似たような症状の男が隣に住んでいる」

「あれ?何だろう・・・数字の2?」

「刺青か?そういえば・・・」

「マルカートさんも、あるね。番号は違ったと思うけど・・・」

「やはり、そうか・・・」


いきなり、黒マントの男がクラウドの腕を掴んだ。


「ぐっ・・・!」

「クラウド!?」


クラウドは頭を押さえて痛がるような素振りを見せる。

今までに何回か見た光景。

黒マントの男と関係あるの・・・?

クラウドは怯えるような素振りを見せた後、正気を取り戻したのか目を見開いた。


「うぁ・・・あ・・・」


クラウドにばかり目をとられていたが、黒マントの男がいつの間にか立ちあがり歩き出し、その場を離れて行った。

震える左手を見つめるクラウドにエアリスと私が声をかける。


「しっかり、クラウド、しっかり!」

「クラウド・・・私の声、聞こえてる?」

「あ・・・あぁ・・・エアリスはセフィロスを知ってるか?」

「英雄・・・セフィロス。5年前不慮の事故で死亡。ニュースで、やってた・・・」

「実は生きているのかもしれない」

「・・・えっ?」


クラウドの言葉に思わず驚きの声が出る。

だって、セフィロスは、セフィロスは・・・。


「名前・・・混乱を招くようなことを言ってすまない。でもこれは・・・」

「嘘!だってセフィロスは5年前に・・・生きてるなんておかしい・・・意味分からないよ。何でセフィロスが生きているのに私の両親は・・・!」

「名前、落ち着いて!」


咄嗟にエアリスに手を握られる。


「・・・ごめん。こんな話」

「名前、大丈夫だよ。大丈夫だから、ね」


エアリスは混乱して訳が分からなくっている私が落ち着くまで、ずっと手を握ってくれていた。

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