だけど私達には25分しかない。
少し焦りを覚えながらも銃を撃ち込む。
「戦闘フェーズ第二段階へ移行!ここからがエアバスターの本領発揮だ・・・充電開始!さぁ慌てふためけ!」
今となっては不快感すら覚えるハイデッカーの声が響き渡る。
するとエアバスターの胸元が私の方へ向く。
「・・・やばっ」
私は咄嗟に横に飛んだ。
体勢をすぐに立て直し、飛びまわっているエアバスターの左腕にいかずち属性の弾を撃ち込む。
エアバスターの左腕は煙を上げて落ちていく。
「やった!」
「おう名前!やるじゃねぇか!」
私に攻撃が向いていないうちに、もう一発右上に撃ち込むと同じように煙を上げた。
「くっ・・・エアバスター最終フェーズに移行する!さぁ処刑の時間だ!」
エアバスターは飛び、空中戦になる。
もう少し・・・!
「空中戦か・・・二人が頼りだ!名前!バレット!」
クラウドが私とバレットに声をかける。
「了解!」
「おう!フォローはそっちに任せたぜ!」
ただひたすらに引き金を引き続ける。
エアバスターは再び私の方向に体を向けた。
「私がそんなに邪魔ですかね・・・」
スナイパーライフルの引き金を引こうとすると弾がなくなっていることに気づく。
急いでリロードしないと・・・!
焦っていると私の前にレーザービームが飛んでくる。
咄嗟にしゃがみ込むと同時に頬にチリッとした感触と同時に、血が流れていった。
それを見たクラウドが私に向かって叫ぶ。
「名前!大丈夫か!」
「少しかすっただけ!」
立ちあがってエアバスターの頭に撃ち込む。
きっと・・・あと少しでいける!
続いてバレットも無数に腕のマシンガンを撃ち続けた。
『アバランチ諸君!名残惜しいが、お別れの時間だ・・・この映像は戦意高揚のため大いに活用させてもらうぞ!』
「あと少しだ!力を合わせるぞ!」
「いつでも行けるよ!」
「派手にかましてやろうぜ!」
「まだまだ行ける!」
クラウドの掛け声にティファ、バレット、最後に私が続く。
そしてエアバスターがクラウドに攻撃をしかけようとした瞬間、クラウドが飛び上がりエアバスターに渾身の一撃を浴びせた。
エアバスターの全身から煙が噴き出し、やがて爆発した。
物凄い勢いの爆風に目の前が見えなくなり吹っ飛ばされる。
・・・体が宙に浮く感じがする。
クリアになった視界にはクラウドが片腕で私が落ちないように支えながら、もう片方の腕で鉄橋を掴んでいる姿が映った。
同じく爆風で飛ばされたバレットとティファが私達の傍にかけよる。
「もうすぐ爆発するぞ!」
「俺はいいから名前を引き上げてティファを!」
「なっ・・・クラウド!そんなの駄目一緒に逃げなきゃ!」
自分を犠牲にしようとするクラウドに私が叫ぶ。
「クラウドは死んじゃ駄目な人なの!それなら私が落ちた方がマシだから!」
「名前・・・怒るぞ」
クラウドの目が本気で怒ってるのが分かった。
でも、本当のこと。
私がいなくなる方がずっとマシだよ。
「クラウド!名前!」
ティファが必死に手を伸ばすが更に爆風が起こり、クラウドの手が鉄橋から離れてしまった。
「くっ・・・・」
「やっ・・・クラウド!なんで・・・」
昨日パラシュートで飛んでいる時とはまた違う浮遊感が私達を襲う。
「名前・・・自分が犠牲になって死ぬようなことは絶対にしないでくれ」
クラウドは私に諭すようにそう言いながら行き場を失くしていた、もう片方の腕と私を支えていた腕とで私を抱き締め自分が下に、先に地に打ちつけられる方へと体を反転させる。
さっきの言葉に反論しようとしたのに抱き締められてる力があまりに強くて私は何も言い返せなかった。
永遠に続くような浮遊感の中クラウドの腕の中で私は意識を手放した。
「もしも〜し!」
誰かの・・・声が聞こえる。
「も〜しも〜し!」
ハッと目を覚ます。
目に映ったのは穴の開いた・・・屋根?天井?
ここは・・・建物の中?
・・・生きてる?
私はガバッと自分の身を起こした。
「あっ!目を覚ました!・・・大丈夫?」
目の前には綺麗な緑色の目をした女性。
「私・・・生きて・・・」
「生きてるよ。それより下にいる男の子。大丈夫?」
私はハッとして自分の下に人がいることに気づく。
「クラウド!ねぇクラウド!」
私はクラウドを下敷きにしてしまっていた。
まだ目を覚まさないクラウドに必死に呼びかける。
「う・・・」
唸りながらクラウドがゆっくりと目を開けた。
「クラウド・・・良かっ・・・」
言い終わる前にクラウドに両手で顔を包まれる。
「名前!大丈夫か!?顔に傷が・・・」
「ク、クラウド・・・これはエアバスターと戦ってた時にできた掠り傷だから大丈夫だよ。後、他の人が見てるから、ちょっとこの格好恥ずかしい・・・かな」
クラウドがハッと目を見開いて周りを見渡し緑色の目をした女性を視界に捉える。
「わ・・・悪い」
「良かった。二人とも無事?」
女性が話始めた瞬間、クラウドは即座に立ちあがり女性に話しかける。
「・・・アンタは?」
「エアリス・・・名前、エアリス」
「・・・クラウドだ」
「あ・・・私、名前っていうの」
急に始まった自己紹介に私も名前を名乗る。
「名前、はじめまして。クラウドは・・・また、会えたね」
エアリスはふわりとクラウドに笑いかける。
初対面じゃ・・・ないの?
私が不思議に思っているとクラウドが首を捻りながら答える。
「そうだったか?」
「えークラウド・・・それは・・・」
「本当だよ!覚えてないの?・・・ほら、お花」
エアリスが両手を広げて指す先には黄色のお花。
これ、クラウドがティファにあげてたお花、だよね・・・?
「ああ・・・花売りの」
クラウドは思いだしたように花を見た。
「・・・ここは?」
「スラムの教会。伍番街。いきなり二人落ちてくるんだもん・・・・驚いちゃった。お花畑、クッションになったのかな。運いいね」
エアリスのその言葉にハッと気付く。
お花・・・踏んじゃってる・・・!
「エッエアリス!ごめんね!」
「あんたの花か!・・・悪かったな」
「気にしないで!お花・・・結構強いし、ここ特別な場所だから。ね、名前・・・これ落としたよ」
エアリスが差し出したのは、いかずちのマテリア。
落ちた拍子に落ちちゃったのかな。
「ありがとう、エアリス」
「私も持ってるんだ!」
エアリスはそう言って髪の毛についているピンクのリボンを私の方に向けた。
「そうなの?リボン、かわいいね」
そう言うとエアリスは嬉しそうに、そしてどこか懐かしそうに、少し寂しそうに笑った。
「マテリアなんて珍しくもなんともない」
そう言うクラウドに何でそういう言い方しかできないかなぁと少し思ったが、エアリスは全く気にした素振りもなく話を続ける。
「でも、私のは特別。だって何の役にも立たないの」
「・・・使い方を知らないだけだろ?」
「そうかもね」
「お守り代わりなのかな?・・・そういう使い方も素敵だと思うよ」
「ふふ、名前はさすが女の子だから分かってくれるね。でも・・・使い方を知らない、それでもいいの。身につけてると安心できるし、お母さんが残してくれた・・・ね、せっかくのはじめましてと再会だから、少しお話する?」
「うん!エアリスがよかったら」
クラウドの返事も待たずに私が返事をする。
エアリスは良い意味でティファやジェシーと違う感じがして初対面なのにすごい話やすくて、単純にもう少し話がしたいなって、そう思った。
「やった!それじゃあ・・・」
エアリスが話始めると同時に開いた扉。
赤髪のスーツを来た男と・・・神羅兵が教会に入ってきた。
「邪魔するぞ、と・・・お前等、何?」
赤髪の男は、クラウドを見て、その次に私に視線を移す。
何か・・・頭のてっぺんからつま先まで見られてる気がする。
「・・・へぇ」
へぇって・・・失礼な・・・。
「この人、私達のボディーガード!ソルジャーなの!」
エアリスは私の手をとってクラウドの後ろに隠れる。
クラウドがソルジャーだったってそんな話、したっけ?
クラウドも驚いてエアリスを見ている。
「ソルジャー?」
赤髪の男は怪訝そうに眉を潜めた。
「元、ソルジャーだ」
訂正するクラウドの目を赤髪の男が覗きこんだ。
「あらま、魔晄の目」
「・・・ボディーガードも仕事のうちでしょ?ね、なんでも屋さん?」
話していないクラウドの情報を知っていることに驚きながらもエアリスは続ける。
「私のカン、当たるの・・・ボディーガードお願い。名前のことも怪我・・・させたくないでしょ」
「あぁいいだろう・・・でも安くはない」
「じゃあね・・・デート1回!」
そう言って人差し指を立てたエアリス。
エアリス・・・見た目によらず大胆。
「へぇ・・・やっぱり本物かよ。で、そこにいるお姉さんは何?」
「え・・・私?」
話を振られるとは思ってなかったので、驚く。
何て言うのが正解が分からなくてすこし迷った。
「えーと・・・彼の助手、です」
「へぇ・・・助手・・・それだけか?」
「・・・そうだけど」
「ほぉ。じゃあ一安心だぞ、と」
よく分からないけど、あまり深く掘り返されなかったので少しホッとした。
「で、ソルジャーつったな。お前、クラスは?」
「ファースト」
クラウドの言葉に赤髪の男は馬鹿にしたように笑いだす。
「いくらなんでもファーストってお前よぉ・・・」
その言葉にクラウドは大剣を抜き切りかかるが、赤髪の男は華麗に交わし、クラウドと距離をとる。
クラウドはエアリスに、逃げろという視線をやった。
「お花、踏まないで!」
「・・・だってよ」
叫んだエアリスに赤髪の男が答えると神羅兵達は私達に銃を撃ってきた。
「おおっと!そこのお姉さんはひとまず撃つなよ、と」
「え」
「何でですかレノさん!」
私は驚きで声を上げるとレノと呼ばれた男が私を見て答えた。
「一目惚れ。恋に味方も敵も関係ないぞ、と」
「・・・は!?」
私は驚きすぎて先ほどの三倍くらいの声を出してしまう。
「何をふざけたことを・・・」
「俺はいつでも本気だぞ、と。あ、そのお姉さん渡してくれたら今回は見逃してやる」
「・・・渡すわけないだろ」
「ヒュー!名前、モテモテー!」
エアリスの冷やかしの声が聞こえる。
どこまで本気なのか分からないけど、変な男にはたまに好かれるんだよなぁ・・・と溜息をついた。