「ガハハハハ!薄汚いネズミども、よく来たな!」


戦闘態勢に入った私達の前に巨大なホログラムが現れた。


「戦意扇動広報作戦を指揮する神羅カンパニー治安維持部門統括・・・ハイデッカーだ」


そう言いながら右胸に手を当てお辞儀をする。


「喜ぶがいい・・・貴様らの悪行はミッドガル中に放送されているぞ!」


ハイデッカーが指す先にモニターのホログラムが映しだされた。


『伍番魔晄炉前からの中継です。神羅カンパニーは魔晄炉への爆破予告を分析し爆破の対象を伍番と特定・・・施設内にて実行犯を発見し、現在追跡及び爆発物の探索にあたっています』


重ねてそこに移し出されたのはジェシー、ビッグス、ウェッジの映像。

これはきっと・・・一番魔晄炉の時。

その頃から監視されていたってこと・・・?


『続いて各地の反応です』

『はい・・・こちら伍番街スラムです。爆破対象の特定報告を受けて神羅カンパニー危機対策本部からの避難勧告が通達されました。壱番魔晄炉爆破事件に続く連続爆破実行犯の非道な犯行に非難の声が巻き起こっています』


映し出される街の混乱した状況。


『プレジデント神羅は市民の暮らしを侵す脅威を断固排除すると宣言しています』

「さぁ・・・不満を溜め込んだ市民にとびきりの娯楽を提供してもらおう。クライマックスは・・・」

「デカブツ!?」


叫んだバレットの先にはさっき見た最新鋭の神羅機動兵。

背筋が凍る感覚。

こんなの出されたら・・・。


「我が社の誇る最新鋭の大型機動兵・・・エアバスターによる公開制裁だ!」

『整備班から報告です!エアバスターの整備進捗は現在60%!想定より遅延しています!』

「撮影中だ!」


そう言い残したハイデッカーのホログラムは消え、声だけが響き渡る。


『館内の警備担当に通達!侵入者をすみやかに捕獲しブリッジに連行しろ!』

「大人しくしろ!」


開いた扉から神羅の戦闘員が現れる。

私達は再度戦闘態勢に入り、攻撃をしかけていった。


『繰り返す。警備班に通達・・・侵入者を速やかに捕獲しブリッジに連行しろ!整備班はエアバスターを早急に仕上げろ!』


戦闘員達を全て倒したが、絶えずにアナウンスは鳴り響いている。

耐えかねたバレットが大声で叫んだ。


「うるせぇぞ!」

「このままじゃ神羅の思うつぼってことだよね」


それに対してティファは冷静に話し始める。


「ああ・・・奴ら好きなようにニュースを捏造するぞ」

「悔しい」

「そうは行くかよ・・・公開制裁って言うならあのデカブツをぶっ壊して神羅に赤っ恥かかせてやろうぜ」

「ああ、悪くない」

「舐められたままじゃ嫌だしね」


クラウドに続き、私もスナイパーライフルに、いかずちのマテリアをセットしながら答えた。

私達は改めて決意を胸に走り出した。

途中で現れる神羅兵達も数は多いがそこまで手こずる敵ではない。


「もうすぐ出口だな・・・ティファ、爆弾のスイッチは?」


バレットがティファに最後の確認をする。


「準備はできてる」

「デカブツをぶっ壊したらポチッといくぞ」

「・・・うん」

「何があろうと俺達はセブンスヘブンに帰る。必ずだ・・・絶対だ!」

「うん・・・マリンにただいまって言おう?」

「もちろん名前も・・・クラウドも一緒に、ね?」

「スマ〜イルを忘れるな?」

「・・・報酬次第だな」

「相変わらずだねぇ」


言うことは変わらずとも少し表情が優しくなったクラウドに私は笑いながら返す。

少し気持ちが和んだのもつかの間、私達は急いで出口へ向かう。

進んでいくと、ロックがされているであろう扉の横にあるパソコン。

クラウドがロックを解除しようとキーボードを叩き始める。


「・・・緊急ロックモードだ」

「先に進めないってことか?」

「あの部屋から開けられる」

「・・・めんどくさいことしやがって」


クラウドが指示した部屋に向かうと、レバーが4つ設置されていた。


「どうやって開けるっつんだ」

「仕組みは簡単だ・・・レバーを同時に動かせばいい」

「じゃあ一人一つずつ担当ってことでいい?」


私の問いかけにクラウドは小さく頷いた。


「レバーを同時に動かすんだよね?」


そう言いながらティファはレバーに手を添える。


「じゃ俺が音頭とるぜ」


バレットがそう言いながら力強くレバーを握った。


「いや名前だ」

「えっ、私?」


まさかのご指名につい声が出る。


「一番落ち着いて合図してくれそうだからな」

「あ、うん。なんかありがとう」

「ああその通りだクソ!」

「えっと・・・じゃあ皆、自分の横にあるモニターをよく見てくれる?私の合図でその方向にレバーを倒して欲しい・・・。ってクラウド、これで合ってる?」

「問題ない」

「了解。行くよ!せーのっ」


ブーという音が聞こえる。

失敗だ。


「せーのって言い終わったら動かして!じゃあもう1回!せーのっ!」


先ほどと同じ音が響き渡る。


「わりぃ!」

「いやごめん・・・。私の合図が悪いかな・・・」

「まだまだ肩慣らしだ!音頭を取ってやる!セブセブンスンスヘブヘブ!セブセブンスヘブヘブ!」

「ふざけるな」


クラウドが一喝。


「あはっ・・・バレット何それ・・・おもしろすぎてお腹痛い・・・」


バレットの訳が分からない音頭がツボに入ってしまって笑いが止まらなくてお腹が痛い。


「おう!これで肩の力も抜けただろ!」

「名前につられて私も笑えてきちゃった・・・あはは・・・」

「・・・名前、もう一度頼む」

「ご・・・ごめんね・・・せーのっ!」

『緊急ロックモード、解除しました』


機械的なアナウンスが鳴り響き、ガラスの向こうに見えている扉が開いた。


「よかった・・・成功して・・・」

「やったね!名前!」


ティファが片手を上げたのでハイタッチ。

その流れでバレットともハイタッチ。

最後にクラウドに向かって片手を上に上げる。


「・・・」


クラウドは目線を泳がせたままハイタッチしてくれる様子はない。

ズキッ

心が音を立てたような気がした。

いやいや・・・もう大人なんだからハイタッチしてくれないくらいでズキッてなんだ。

私は心の中でブツブツ唱えながら行き場をなくした手を降ろした。


「・・・ごめん」

「・・・いや」


いたたまれなくなって謝ってしまった。


「おうお前ら!行くぞ!」


すっかり離れた距離にいたバレットとティファが私達を呼ぶ。


「あ、ごめんすぐ行く!」


セキュリティ解除された扉を抜ける。

いよいよ、だろうか。


「よし、出口だぜ!」

「・・・見て!」


ティファが指した先には神羅兵器、続いて先ほどと同じように今度はプレジデント神羅のホログラムが映し出された。


「ほう・・・魔晄を浴びた者の目か・・・君はソルジャーだな?」


プレジデント神羅はクラウドに視線をやった。


「元、ソルジャーだ」

「ソルジャーは死ぬまでソルジャーだ。まぁ、役に立たなくなる者も多いが・・・ソルジャーの死因で最も多いものは劣化による自己崩壊。データは非公開だがソルジャーなら皆、知っている」


・・・知らなかった。

横目でクラウドに目をやると力強い目をしている。

クラウドはきっと、大丈夫。


「もちろんだ」


私の不安を消すように食い気味でクラウドがプレジデント神羅を睨みつけながら言い返した。

すると、バレットの銃の音が鳴り響く。


「こっちは無視かよ」


しかし勿論ホログラムにダメージが入ることはなくプレジデント神羅の姿が消え、また現れた。


「ふん・・・君の話はだらだらと長い。そんな予感がしてね」

「てめえらの悪行を数えあげたら、いくらあっても時間が足りねぇ」

「足りないと嘆く者ほど浪費する」

「そう、それよ・・・浪費について話そうじゃねぇか。魔晄の正体はライフストリーム・・・ライフストリームは星を流れる血!その血を神羅が吸い上げ浪費している!このまま続けたら星はどうなる!」

「吸い上げているのは・・・確かに我々だ。だが浪費しているのは誰だろうな?魔晄の本質など誰もが知っている。それでいて見て見ぬふりをしている。そう考えたことは?」

「んなワケあるか!仮にそうだとしても・・・てめえらの洗脳だ!」

「そんな魔法は使えんよ・・・さて、スラムの道化師諸君!君達は今から敵国ウータイの手先だ。市民の戦意を盛大に燃やしてくれ」


プレジデント神羅のホログラムが消えた。


「ウータイだと?何だそりゃ!」

「ハハハハハ!ネズミどもには理解できまい」


声のした方を向けば再びハイデッカーのホログラムの姿。

モニターにはリモート爆弾を解体しようとする神羅兵器の姿。


「なにしてやがる!」

「いいか、これは貴様らの作戦ではない。我々が入念に計画した戦意扇動広報作戦なのだ!よって爆破のタイミングも・・・神羅が決める」


ハイデッカーがリモコンのボタンを押した瞬間、モニターに移っている爆弾の時限装置が動き出した。

残り、25分。

ティファが自分の持つリモコンを押してみるも、何も変わらない。


「てめぇ・・・」


バレットが怒気を含んだ声でハイデッカーを見上げる。


「さぁ・・・ショーの始まりだ」


エアバスターが大きな音を立てて私達の前に立ちはだかる。


「ミッドガル市民の敵、アバランチ!ウータイとの共謀による罪状は明らか!貴様らを即刻、排除する!」


「・・・許さない、全部、大キライ!」


ティファが呟く。


「バレットの思いを踏みにじった・・・私達の故郷を壊した・・・」

「名前」


クラウドがいつもと違うであろう私の様子に不安になったのか名前を呼んでくれる。


「・・・大丈夫。25分?余裕でしょ。もうこれ以上思い通りにさせない」

「おっ・・・名前がそんな怒ってるの珍しいじゃねぇか・・・いけるよな?」

「言われなくても」


久々に自分に湧き上がるこの感情。

最近迷っていた戦う理由。

改めて実感できた気がした。

エアバスター?最新鋭?

やってやろうじゃない。

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