鈍っていた戦闘の感覚を取り戻し、敵も度々出現するが難なく倒せるようになってきた。
「間違いねぇ。これがビッグスの言ってたメインリフトだ。あいつもこの先で待ってるぜ」
乗り込み、急いでビッグスの元へと向かう。
「もうすぐか」
「・・・はぁ」
バレットの一言にティファが溜息をついた。
「どうしたの、ティファ?」
「ううん、いよいよだなって・・・思ってたより緊張してたみたい」
「その気持ち・・・分かる」
壱番魔晄炉爆破に参加してない私達。
きっとバレットやクラウドより気は張っているはず。
「こればっかりは俺も慣れねぇ」
一番、反神羅への思いが強いバレットでもやはり慣れないもんなのか、と少し安心する。
先頭を歩くクラウドが部屋に踏み込んだ瞬間、大剣を振り抜いた。
「降参!」
そう呟いたビッグスの喉元にクラウドの大剣が触れるか触れないかの距離。
「てか・・・クラウド?ジェシーとウェッジは?」
ビッグスはクラウドの姿に驚きを隠せない様子。
「どんな感じだ?」
ビッグスの問いかけにバレットは返事をすることなく聞く。
「犯人グループが列車から飛び降りたって上は大騒ぎ。おかげでここは静かでな。魔晄炉へのルートはささっと確保済みよ」
ビッグスが得意気に隠し通路を指差す。
「ヘイヘイヘイ、ビーッグス!」
バレットが大声を上げてビッグスを抱き締めようとする。
「で、あとの二人は?」
それも虚しくビッグスはするりとすり抜けティファに問う。
「ジェシーがね・・・怪我をしちゃって」
「ひどいのか?」
「口数は減ってねぇ。大丈夫だ」
バレットが安心させるように力強く言いきった。
「世話になるな」
ビッグスがクラウドを見て笑い、話続ける。
「四番街駅行きにのって正解だったな・・・警備は四番街に集中してる。でもこっちの本命は伍番!ちょっと複雑だが、この奥はもう魔晄炉ン中だ」
「狭っちい穴ボコだぜ」
確かにバレットキツキツだろうなこれ・・・と隠し通路を見ながら思った。
「文句言うなよ。こっちは補給物資とワイヤーリール・・・調子は?」
「ちょっと不安だったけど、ビッグスの顔見て安心した」
「名前・・・嬉しいこと言ってくれるぜ!」
「みんなのこと、お願い」
「おうよ!」
ティファの問いかけに力強く返事をするとワイヤーリールで地下へと降りて行った。
「よし、俺達もワイヤーの装備だ。落とさねぇようにしっかりくくりつけとけよ・・・作戦が終わったらこいつで一気に下まで降りる。・・・生きて帰んぞ」
「当然だ」
「うん」
「もちろん」
私が最後にそう告げ、歩き出した。
隠し通路を抜けると無事、伍番魔晄炉に到着した。
「匂う・・・匂うぜ・・・魔晄炉の匂いだ」
「いよいよだね」
確かに異様な匂いを感じる・・・気持ち悪くなりそうなほど。
「構造は壱番と同じようなもんだろ?」
バレットがクラウドに顔を向ける。
「ああ・・・魔晄だまりは近い」
「行こうぜ・・・しかしどっから降りるよ?」
ひとまず下に降りたいが、梯子なども見つからない。
「ここは?」
ティファが太いパイプを指して言う。
「おっ!こりゃいいな・・・先行くぜ!」
バレットとティファが率先してパイプを滑り降りて行く。
ここを滑り降りるの・・・?
ティファは体幹強いし、後の二人は男の子だから大丈夫かもしれないけど、運動神経が人並の私にはかなり難関。
「名前、降りないのか」
「え」
モタモタしていると後ろからクラウドに声をかけられる。
「いや・・・ちょっと・・・」
「怖いのか?」
クラウドが意地悪そうな顔で笑う。
・・・こんな顔始めて見たんですけど。
「そっ・・・そんなことない」
「じゃあ俺が先に行くぞ」
「待って待って!助けて!」
「・・・いつもの仕返しだ」
クラウドはまたさっきの顔で笑いながら私の横でしゃがみ込んでジェシーが怪我をした時と同じように担ぐ。
「お・・・お姫様だっこ・・・恥ずかしい・・・」
「一人で行けないなら大人しくしてろ」
「・・・はい」
クラウドは私を抱いたままパイプを滑り降り、横のパイプにジャンプする。
「わわわわわ」
「もう少し我慢してくれ」
パイプの終わりが見えたと同時にクラウドが飛び、無事地面に着地した。
「死ぬかと思った・・・クラウドありがとう」
「気にするな」
クラウドってあんまり喋らないけどヒーロー感あるよなぁとか場違いなことを思いつつ歩き始めると、巨大な兵器が目に入った。
「こんなデカブツがでてきたらひとたまりもなさそうだな」
バレットの大きな身体が小さく見えるくらい大きい兵器が私達を見下ろすように立っている。
「このクラスの機動兵は巨大モンスター用だ。最新鋭だろうな・・・もし俺達の前に現れたらその時は逃げた方がいい」
「おねんねの時間で助かったぜ・・・」
順調に下へ下へと降りていく。
ビッグスの言う通り、あまり警戒はされていないみたい。
「・・・あそこだ」
クラウドの目線の先には制御システムのようなもの。
・・・遂に。
心の中で気合いを入れ直した。
「・・・うっ」
クラウドは右手で頭を押さえながら膝をついた。
突然苦しみ始め、どうしたらいいのか分からないまま立ち尽くす。
「おい、しっかりしろ!」
「・・・ティファ」
バレットの声にクラウドは目が覚めたように顔を上げ、開口一番にティファを見つめ名前を呼んだ。
「ん?」
名前を呼ばれたティファは不思議そうに返事をする。
クラウドは無言で首を振った。
・・・クラウドは一体何を見たの?
なんて聞けるわけでもなくクラウドが心配ないとでも言うように歩きだしたのでそれに続く。
「・・・タイマーは何分だ?」
「何分でもいいぜ?今回はリモートスイッチ式だ」
「ジェシーが作ってくれたの」
ティファがリモコンを取り出した。
「安全圏まで離れてからポチ、ドッカーン!」
「安全圏?」
「ねぇか、そんなもん。脱出口は正面口だ・・・来た道、戻るぞ」
私達はバレットの指示通り来た道を戻ろうと爆弾に背を向け梯子へと向かおうとした・・・その時。
「梯子・・・が」
登れない状態まで梯子が上に上がって行く。
「タイミングが良すぎる」
「最初からお見通しだったってわけかぁ・・・」
私は、まぁそんな人生うまくいかないよなぁと溜息を吐きつつ、扉から無数に出てきた神羅の兵器をスナイパーライフルのスコープで覗きこんだ。