「ターゲットは伍番魔晄炉だ・・・駅からは市街地の裏道を抜けていく。魔晄炉内に入っちまえば後は壱番と同じ・・・」
「魔晄だまりを目指す」
クラウドは壱番魔晄炉での作戦を思い出すようにそう返した。
「派手にドカンと、かましてやるぜ・・・ウェッジとジェシーの分まで俺らでやりとげる」
そう言うバレットの声は小さいながらも反神羅への思いで燃えていた。
私達は小さく頷き車両の中を歩き始める。
乗客は比較的少ないように感じられた。
目立たないところで立ち止ったティファはさっきのバレットと同じように小声で私達に囁く。
「爆破予告のこと・・・ビッグスの予想より早く広まってる」
「・・・固まってると目立つか?・・・お前らはここにいろ」
バレットはそう告げて先の車両へと歩き始めた。
『まもなくIDスキャニングエリアを通過します』
車両に流れるアナウンスに心なしか背筋が伸びる。
「・・・大丈夫、だよね」
「・・・最初の関門だ」
「楽勝だろ」
私とティファが不安そうに呟く中クラウドは飄々としている。
流石、元ソルジャーだなと踏んできた場数の違いを実感させられた。
アナウンスが流れて時間が立っているが何も起こらない。
『臨時IDスキャニング中です』
ほっとしていたのもつかの間、再度アナウンスが流れた。
臨時でスキャニングが行われたということは、まずいかも・・・。
『非常警戒態勢を発動』
『手配IDの疑いあり』
『後部車両より車両チェック並びに隔離準備を開始します』
そのアナウンスに私達は目配せをした。
全員が考えていることは同じ・・・考える前に先頭車両の方に向かわないと。
「お前ら早く来い!」
バレットが焦った様子で私達を呼んだ。
バリン!
突然、窓ガラスが割れ神羅の兵器が車両の中に入ってくる。
乗客は悲鳴を上げ先頭車両に向かい走り抜けていく。
『車両ロックシステムを起動』
『3分後この車両は隔離されます』
邪魔な敵を倒しつつ前へ前へと急ぐ。
「・・・キリがないな」
『手配ID所持者4名の隔離を確認』
『掃討フェイズに移動します』
「・・・まずいよねこれ、どうするバレット」
「・・・仕方ない。駅は包囲されているはずだ。飛び降りよう」
私はバレットに指示を仰いだが、クラウドが提案を持ち出した。
「マジか!?」
驚きを隠しきれないバレット。
「飛び降りるって、この全速力で走る列車から?」
「速度を落とせばいい」
「それビッグスの『プランE』だな」
バレットはそう呟いてから腕のマシンガンで扉を撃ち、蹴っ飛ばした。
そして、ティファが拳で思いっきり緊急停止ボタンを押す。
「っわ・・・」
急な速度の変化に足元がぐらつく。
「じゃあ先に・・・行くぜ、行くぜ、行くぜ〜!」
バレットが意を決して飛び降りた。
「じゃあ、次、私・・・行くね」
バレットの次は年齢的に私か、半ば諦めて扉の前に立った。
「名前、一人で行けるか」
「この前バイクから飛び降りる感じで行けば大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・」
「そうだ、そんな感じだ」
クラウドが心配したのか声をかけてくれたけど、そんな感じってどんな感じだよと思いながら意を決して思いっきり飛び降りた。
身体を襲う気持ち悪い浮遊感に耐えながらも、なんとか受け身をとったので痛いのは背中だけ。
服についた汚れを払って少しよろめきながら立ちあがった。
「ひとまず、車両の進行方向に向かうしかない、か・・・」
他の列車が来ないか注意しながら歩き始めると、二つの重なった影が見えて、声が聞こえた。
「・・・平気か?」
「うん」
クラウドがティファを庇い抱きとめていた。
二つの影が重なっていたのは・・・?
もしかしてキスしてた・・・?
いやいや、こんな重大な任務中に二人がそんなことするはずない、と一人で首を横に勢いよく振り、二人が離れたのを確認して声をかける。
「ティファ!クラウド!」
「名前!大丈夫だった・・・?」
「怪我はないか」
「大丈夫!・・・バレットがいないね」
辺りを見渡しているとバレットの声が聞こえた。
「名前!今バレット聞こえたよね・・・」
「うん、あっちだね・・・行こう」
神羅の兵器を壊しながらバレットの声がする方へ急いだ。
「バレット!」
「おう!こっちだ!」
一人で戦っていたバレットに応戦しその場にいた神羅兵と神羅の兵器を片付けた。
「追っては振り切れたかな」
「よゆ〜よゆ〜!場所の確認してさっさと作戦再開だ」
私達は壁に貼ってある地図に目をやり、ティファが説明を始める。
「私達が乗ったのはメインピラーと四番街をつなぐ四番街線。今いるここは隣の伍番魔晄炉線だね」
「じゃあ、まずは線路沿いに魔晄炉方面に進めばいいのかな」
「名前、その通りだ!ただし駅までは行かねぇ!途中で別の道に入る。魔晄炉近くの駅は、どこもやべぇくらい警戒されてるからな」
「あっちだね」
「伍番街の仲間が目印をつけてる・・・心配はいらねぇ。イケるぜ・・・イケる!」
一層気合いが入るバレット。
私達は線路沿いの道を警戒しつつ進んでいく。
「目印は神羅のイヌの絵だ。壁気にしとけ」
「イヌ?」
「忠犬スタンプ。やつの鼻が向いてる方に伍番魔晄炉への道が続いてんだ。信号の色も見落とすな・・・青が俺達の進行方向だ」
私達は壁に注意しながら忠犬スタンプが示す方向に進んでいく。
さっきと同じように壁に地図があったので一度場所を確認することになった。
「近くに使われてねぇ車両基地がある。そこが目指す場所だ」
「着いたあとは」
「隠し通路がある」
クラウドの問いかけにバレットは得意げに返答をした。
私達はまた進みだす。
「進んでも進んでも壁で・・・」
ひたすら続く道のりに嫌気がさしたのかティファが呟く。
私もティファと同じ気持ちでそろそろうんざりしてきたところ。
「壊せばいい」
「バレットと同じこと言ってる」
クラウドの返答にティファは少し笑った。
「取り消す」
「何が不満だよ!」
最初は物凄く仲が悪かったけど、少しは仲良くなったかな、と私も聞こえないように笑った。
「ちょっと待て・・・こっちだ」
バレットが物陰に隠れたので、私達もそれに合わせて身を潜める。
「思ったより警備が厳重だね」
「あの奥が基地みてぇだ。全員蹴散らすしかねぇ」
バレットがそう言うや否や走り出し、敵に銃を撃ち込んでいく。
クラウドとティファもそれに続いたが、私は後ろからスナイパーライフルで援護射撃をし、皆をサポートしていく。
無事全員を蹴散らし、私達は階段を上って行った。
狭い通路を抜けると、エレベーターが見えた。
「情報通りだ!これで降りるぞ」
起動スイッチを押し、全員で乗り込み、下の階に到着する。
「ここを抜けりゃ伍番魔晄炉だ」
バレットの声が響き渡った。
「まだ、先は長いね」
「まぁ・・・なんとかなるだろ!あれが伍番魔晄炉の柱だ」
少し溜息をついた私にバレットが柱を指指す。
「道順は?」
「H区画にあるリフトで魔晄炉近くまで行ける。ビッグスもその先で待ってる・・・行くぞ!神羅に泡吹かせてやる」
バレットの言葉に軽く頷き、伍番魔晄炉を見つめながら一歩を踏み出した。